Step.6 軌道修正

プロジェクトを立ち上げた際に目標や実施方針を定めていますが、サービス・業務企画を詳細に進める中で、当初は見えていなかった様々な課題や制約条件等が明らかになるはずです。当初に考えていた進め方よりもっと良い進め方があれば、目標自体や実施方針を見直し軌道修正を行うことが重要です。

このStepでは、そのような軌道修正について解説していきます。

軌道修正しやすい進め方にする

【標準ガイドライン関連箇所:第3編第4章第4節】

プロジェクトの目標は同じでも、その進め方によって成否は大きく異なります。

後から何度でも軌道修正を行いやすいようにするには、一度に全てを作り上げるのではなく、段階的にサービスを導入しながら細かく変更を行っていく進め方を採ることが望ましいと言えます。

一遍にやらず、一貫してやる

今までにないサービスを始めたり、既存のサービスを大きく変えたりするような難しいプロジェクトほど、全てを一度に実施するべきではありません。このような「一遍」に新しいやり方に変える進め方は、利用者のニーズに十分に応えることが難しいためです。

民間企業で製品開発を行うときは、必ず試作を行い、機能、品質、費用等の様々な要素から検証を行い、修正を何度も行いながら、最終的に製品として成功できると実感を持てるものを製品化します。

プロジェクトも全く同じです。開発段階でプロトタイプを作って利用者によるテストを行ったり、本番運用も一度に行うのではなく一部の利用者を対象に実証実験を行ってから本格的に展開するなど段階的に整備することによって、利用者の声を取り入れながら軌道修正を積み重ねることができます。これが、「一貫」した進め方です。

柔軟に軌道修正する

【標準ガイドライン関連箇所:第3編第4章第4節】

軌道修正しやすい進め方を採用したとしても、やはり軌道修正をすることに躊躇してしまうことは理解できます。しかし、軌道修正すべきタイミングで軌道修正しなければ、その後プロジェクトは十分な効果を達成できなくなります。

次に、実際に軌道修正を行う際の考え方を解説します。

何度も繰り返す

行政の無謬性(むびゅうせい)という言葉があります。行政は絶対に間違いを起こさないという考え方です。この前提に立ってしまうと、仮にプロジェクトを進める中で修正すべき点に気づいても、修正を行うと過去の判断が間違いであることを認める形となってしまうため、修正することができないといった事態に陥ってしまいます。

行政は無謬ではありません。プロジェクトも無謬ではありません。限られた人数、時間制約の中で、もちろん可能な限り現状把握や分析を通してサービス・業務の企画を行いますが、実際の企画を実現に移す段階で修正すべき点が発生してくるのはむしろ当然のことです。修正すべき点が全く出てこないとしたら、恐らく修正意見の聞き方を間違えていると考えた方が良いでしょう。軌道修正を躊躇し、初期の決定に固執してプロジェクトを進めると、利用者がほとんどいないサービス・業務が出来上がり、運用保守経費だけが毎年計上されるような悲惨な事態を引き起こしかねません。

このような考え方を前提においた上で、プロジェクト初期に想定したサービス・業務企画の前提となる課題や仮説が、現状調査の結果と異なっていたことが判明したときは、プロジェクト計画全体の軌道修正を検討しましょう。 試行的にサービスの提供や業務を実施し、利用者や関係者からのフィードバックを踏まえてサービスの見直しを行うなど、何度も確認と改善 のプロセスを繰り返しながら品質を向上させることが重要になるからです。

この考え方は、サービス開始後も全く同じです。継続的に利用者や関係者からの意見を収集し、常に改善を図っていきましょう。

考え方のわかりやすい目安としては、「60点を目指す」ということかもしれません。最初から100点満点のサービスが提供できればよいですが、なかなかそうはなりません。まずは60点のサービスを提供することに注力します。60点のサービスが提供できれば、次に残りの40点に対しても改善を検討します。残りの部分についてさらに60点の改善を行えば全体で84点になります。もう一度改善を行えば93.6点となります。

それぞれの活動の目標は60点であっても、それを繰り返すことで高得点となります。ポイントは、改善のサイクルを早くすることです。まずはチャレンジし、次々に改善をしていくという姿勢を貫くことが、結果的には成功への早道です。

このような考え方に基づいて、サービス・業務企画の内容に軌道修正が必要かどうか、事実を積み上げて得られた内容に基づいて冷静に判断してください。

実施手順

  • 当初想定した内容と把握した事実との差異を客観的に分析し、軌道修正が必要な対象を明らかにする。

  • 軌道修正の方向性を、対象ごとに適切な関係者と検討する。

  • 検討した軌道修正の方向性をとりまとめ総合的に判断した上で、プロジェクト全体としての修正方針を検討する。

  • 事例4-14

    一部地域で試行してから、サービスを全国へ展開

無理に継続しない

軌道修正の考え方の延長となりますが、軌道修正だけでなくプロジェクトの継続必要性自体を判断しなければならない局面もあります。

前述の行政の無謬性の観点からは、プロジェクトを中止することはなかなか判断に迷うことになるでしょう。特に既に予算をつけて契約をしてしまっている段階では、なおさら途中で中止することへの抵抗が大きいこともわかります。

しかし、費用対効果に乏しいと判明したプロジェクトをそのまま継続すると、この先もっと多くの経費が支出され、ほとんど効果が得られないこととなります。長期的な見地に立てば、いつか「あの時、中止判断をしておくべきであった」と振り返られることになるでしょう。「後悔先に立たず」です。後から振り返るのではなく、適切な時期に判断を行うことこそ、行政運営を担う者として最も重要な責務の1つです。

プロジェクトを中止にする理由には、様々なものがあるでしょう。外部環境や内部環境の変化、プロジェクト初期段階の検討不足、プロジェクト進行中に判明した重要課題の存在等です。プロジェクトを中止するためには、関係者にその理由を説明することが不可欠です。プロジェクトの企画運営に携わった当事者として、中止に至った背景や理由については十分に分析を行うとともに、今後同じような失敗を繰り返さないための教訓として整理し、後日参考にできる形にして残しましょう。

プロジェクトを中止するための実務的なプロセスについては、まず、PMOに相談してください。

判断時の留意点

  • 過去決定した方針を変えるためには、関係者に理解を得るための情報が必要となる。方針を変えずに継続した場合と軌道修正や中止した場合、双方の影響を客観的に整理し、可能な限り数値化する。

  • 特に連携するサービス・業務があるときは、連携先の影響も含めた説明資料を準備することが重要である。

  • 中止判断が遅れるほど、影響は深刻化する。PMOに相談して早めにアクションを取ることを心がける。