Step.2 サービス・業務企画の開始準備
医師は、まず患者の話をよく聞き、どのような症状が出ているかをよく調べます。患者の症状をほとんど調べず、いきなり手術するような、そんな医師にはかかりたくないですね。システムを作るときも同じです。まず、今のサービスや業務の現状をよく調べます。そして、誰が何に困っているのか、その背景にどのような事象が発生しているのか、事実を正確に把握するのです。
今までの政府のシステム整備プロジェクトでは、往々にして事前調査のプロセスを簡略化し、システムを作ることが先行する傾向がありました。そのような進め方では、サービスの利用者がよくなったと実感できる効果を出すことはできません。そこで、「サービスデザイン思考」を導入しようという声が高まりました。サービスデザイン思考に基づいた活動の中では、利用者の立場になり利用者と協働しながら、実際に発生している事実を正しく把握した上で、段階的にサービスや業務を改善していきます。
この章では、サービスデザイン思考というものが何なのか、そしてサービスデザイン思考に沿って企画を行うためにどのような活動を行うべきかについて、具体的に解説します。
サービスデザイン思考を理解する
【標準ガイドライン関連箇所:第3編第4章第1節】
サービスデザイン思考とは何でしょうか。サービスデザインを進めていくに当たり、概念や方法論などを整理したものなのですが、言葉を2つに分けて考えてみましょう。
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注記
サービスとは、公共サービス基本法(平成21年法律第40号)第2条では、「公共サービス」について、「国民が日常生活及び社会生活を円滑に営むために必要な基本的な需要を満たすもの」と定義されたもの。
まず、行政による「サービス」についてです。簡単に言えば、国民生活の安定と向上のために、国や地方自治体等が国民や企業に対して何かをするといった行動そのものです。
次に、「デザイン思考(Design Thinking)」についてです。「デザイン思考」とは、デザイナーがデザインを行う際の進め方や考え方を適用して、利用者中心の視点からビジネス上の問題点を解決する方法です。この方法では、サービスの利用者がどのように振る舞い、どのように考えているかを理解した上で、利用者体験全体をデザインします。
言葉をつなげると、「サービスデザイン思考」とは「サービス」+「デザイン思考」であり、「サービスの現状における課題を、デザイン思考を用いて解決しよう」という考え方や手法のことを表しています。
心構えと視点(サービス設計12か条)を理解する
利用者中心の行政サービスを提供し、プロジェクトを成功に導くために必要となる重要な考え方については、デジタル・ガバメント実行計画において「サービス設計12箇条」としてまとめています。これらは、利用者中心としてサービスを設計するサービスデザイン思考を具体化したものであり、これまでのサービス・業務改革(BPR)の取組から得られたノウハウをベースとしつつ、サービス改革に関する近年の国際的な動向を取り入れたものです。
本章では、このサービス設計12か条に示された心構えと視点を具体的に推進し、サービス・業務改革(BPR)を実現するための実践的な解説を行っています。

- 図4-1
サービス設計12か条
まず最初は、利用者のニーズ把握から出発し、業務の現状把握を通して企画案を検討しますが、そのプロセスを何度も繰り返し、プロジェクト初期の想定と異なる結果になると判明した際は、計画全体を柔軟に軌道修正します。
なお、サービス設計12か条は、全工程を対象とした心構えと視点を表すものですが、とりわけ企画時点で重要になるポイントが多いこともあり、本章でまとめて解説を行っています。
また、本章の解説の中では、サービス設計12か条を補足する意味合いで、さらに注意すべき観点や参考にすべき考え方等を追記しています。