第1章 本仕様書について
1.背景
戸籍事務は、国民の身分関係を登録・公証する事務であり、全国的に統一した取扱いが要請されるものであることから、戸籍事務を電子情報処理組織により処理する場合においても、事務処理の統一性が確保されなければならない。また、電子情報処理組織により処理する場合は、戸籍情報が不可視的な磁気ディスク等に記録されたデータになることから、従前の簿冊処理によって行っていた場合以上に、データの保全・保護について、厳格に管理することが必要である。
法務省では、昭和60年度から戸籍事務のコンピュータ処理に関する調査研究を開始し、5年間の成果である「平成元年度報告書」において指摘された現行戸籍事務の問題点とその対応への方途、及び「平成2年度報告書」における事務改善の要望事項とその解決策を踏まえて、システム化の機能要件を把握し、システム処理の方法について構想化の上、平成6年に戸籍情報システムの開発の統一基準(平成6年7000号通達、同7001号通知、同7002号通達ほか)を定めるとともに、その細目となる戸籍情報システム標準仕様書(以下「改定前仕様書」という。)を策定し、その後は法令改正等の内容を反映させるため、毎年改定を行ってきた。
上記のとおり、戸籍情報システムについては、既に統一的な基準が存在し、市区町村ごとに処理方式、画面やファイル等の様式、帳票等が既に統一されている状況にあったところ、令和元年6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019」において、国主導の下で地方自治体等の情報システム・データ標準化を推進することとされ、令和3年9月1日に地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年法律第40号)(以下「標準化法」という。)が施行され、同法第2条第1項に基づく政令で定める事務として戸籍事務が規定されるに至った。
この規定により、本仕様書は、デジタル庁が発出した標準仕様書(地方公共団体情報システム標準化基本方針及び地方公共団体の基幹業務システムに係るデータ要件・連携要件標準仕様書【第1.0版】等)の内容を反映し、市区町村・ベンダ意見照会を経て令和4年8月30日に【第1.0版】が公表された。
令和5年8月31日には、今後の戸籍法令改正等による改定や地方公共団体情報システム標準化基本方針を踏まえ、【第2.0版】を公表した。
令和6年3月31日には、指定都市要件を取り込んだ【第3.0版】を公表した。
令和6年8月31日には、主に行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用に関する法律等の一部を改正する法律(令和5年法律48号)(以降、「振り仮名の法制化等」という。)の再検討を踏まえ、【第4.0版】を公表した。
令和7年8月31日には、令和6年民法第33号(親権に関する民法改正)及び出生届・死亡届のオンライン届出対応を取り込んだ【第5.0版】を公表した。
2.目的
本仕様書は、標準化法第5条第1項の「地方公共団体情報システムの標準化の推進を図るための基本的な方針」を踏まえ、本仕様書の内容が、将来的に同法第6条第1項の「地方公共団体情報システムの標準化のため必要な基準」として規定されることを前提として、改定を行ったものである。
3.対象
(1)対象自治体
本仕様書の対象自治体は、全ての市区町村とする。
なお、本仕様書における「市区町村」の区とは、特別区、指定都市の区及び総合区のことである。
本仕様書においては、一般市区町村と指定都市及び中核市の区別はない。
(2)対象分野
本仕様書が規定する対象分野は、地域情報プラットフォーム標準仕様における戸籍ユニットとする。
これは概ね戸籍制度上の事務と対応しているが、必ずしも1対1で対応しているわけでない。戸籍の附票の管理は戸籍ユニットに位置付けられているが、住民基本台帳制度及び戸籍制度の共管事務であり、法令上は住基法等に記載されている。そのため、本仕様書の対象外とする。
また、戸籍手続オンラインシステム及び戸籍副本データ管理システムに関する機能の一部については本仕様書において規定していない。
(3)対象項目
本仕様書では、以下の項目について規定する。
・機能・帳票要件(第2章)
・データ要件・連携要件(第3章)(※)
・非機能要件(第4章)
・業務フロー(別紙1)
・ツリー図(別紙2)
・機能・帳票要件(別紙3)
・帳票詳細要件・レイアウト(別紙4)
・戸籍情報システムの詳細仕様(別紙5)
・戸籍情報システムと関連事務の処理概要(別紙6)
・システム化に係わる「詳細設計」等資料編(別紙7)
以下の項目について章立てはしないが、戸籍情報システムの詳細仕様(別紙5)で規定する。
・画面要件
・ヘルプやガイドの具体的内容
※データ要件及び連携要件については、「地方自治体の業務プロセス・情報システムの標準化の作業方針の見直しについて」(旧内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室(以下「IT総合戦略室」という。現デジタル庁)に基づき、デジタル庁を中心に検討が行われており、それを仕様とする。
また、非機能要件では、市区町村を通じて共通して規定すべきもの(例:セキュリティ)については規定し、共通して規定すべきでないもの(例:研修)については規定しないこととした。したがって、各市区町村の情報システムの調達において、本仕様書に規定されていない非機能要件を設けることを妨げるものではない。
デジタル社会を見据えた対応
本仕様書は、これからのデジタル社会においてあるべき姿(電子化・ペーパーレス化)を視野に標準を設定するとしつつも、これからのデジタル社会においてあるべき姿にそのまま即したものには必ずしもなっていない。
また、これからのデジタル社会を見据えれば、実務やシステムの前提となる制度自体を見直すべきという考え方もあり得る。しかし、そうした制度自体の検討については、一朝一夕にできるものではなく、あまりにも現在の実務から遊離した仕様書となれば、実効性が失われる。
そこで、本仕様書としては、電子化・ペーパーレス化も含め、これからのデジタル社会においてあるべき姿を視野に入れつつ、現行制度の下で、多くの自治体が支障なく対応できるものについて、できる限り盛り込むこととした。
他方、デジタル社会を見据え、様々な社会環境の変化に対応するためには、本仕様書の作成後、実務やシステムの前提となる制度を随時見直していくことが重要であり、制度の見直しとともに本仕様書を改定していくことが求められる。
4.本仕様書の内容
(1)本仕様書の構成
第1章では、本仕様書の背景、目的、対象及び内容について記載している。
第2章、第3章及び第4章では、それぞれ、戸籍情報システムが備えるべき機能・帳票要件、データ要件及び非機能要件について記載している。「(2)標準準拠の基準」にあるように、これらの章は、パッケージシステムが本仕様書に準拠するための判断基準となるものであり、言わば本仕様書の本体部分である。
第5章では、本仕様書において用いている用語について、解釈の紛れがないよう、定義している。
また、別紙1において業務フロー、別紙2においてツリー図を記載している。業務フローは、第2章で規定する機能・帳票要件が業務上どのように位置づけられ、有効に機能するのかについて市区町村及び事業者の共通理解を促すため、それらに対応したモデル的な業務フローを示している。ここで示した業務フローは、実際の各市区町村における業務フローを拘束するものではないが、現在の業務フローでは、本仕様書における機能・帳票要件どおりの内容で業務を行うことが難しいと考える市区町村は、現在の業務フローを本仕様書に示す業務フローに寄せる(BPR)ことで、本仕様書における機能・帳票要件どおりの内容で業務を行うことが期待される。ツリー図は、戸籍に係る業務における機能・帳票要件の一覧性を高め、標準化の対象となる業務を明確化するため、業務フローに紐づいた形式で記載している。
(2)標準準拠の基準
本仕様書の対象は地域情報プラットフォーム標準仕様における戸籍ユニットを基本としており、この対象範囲において定義すべき機能について、【実装必須機能】【実装不可機能】【標準オプション機能】の3類型に分類した。可能な限り3類型のいずれかに該当するか分類をした上で、定義すべき機能の範囲内で分類されていない機能は、カスタマイズ抑制、戸籍情報システムベンダ(以下「戸籍ベンダ」という。)間移行の円滑化の観点から、【実装不可機能】と同様のものとして位置付ける。
パッケージシステムが本仕様書に準拠するためには、【実装必須機能】をいずれも実装し、【実装不可機能】及び分類されていない機能をいずれも実装しないことが必要である。【標準オプション機能】は、実装しても、実装しなくても、実装した上で自治体が利用を選択できることとしても、いずれも差し支えない。3分類のいずれにも位置付けられていない機能については、原則【実装不可機能】として扱うものとする。ただし、分類されていない機能のうち、市区町村や戸籍ベンダの創意工夫により新たな機能をシステムに試行的に実装させて機能改善の提案を行う場合は、当該試行についてあらかじめ公表し、当該試行を本仕様書に盛り込む提案となることを条件にして実装することを可能とする。
なお、【実装必須機能】のうち、法令上必ず使用しなければならない機能と必ずしも使用しなくてもよい機能があり、個別に判断する必要がある。
(3)想定する利用方法
標準化法第8条第1項では、「地方公共団体情報システムは、標準化基準に適合するものでなければならない。」とされており、本仕様書を基礎として、各所管大臣は、標準化法第6条に基づき標準化基準を策定することが想定される。したがって、本仕様書については、
・今後、整備予定の「ガバメントクラウド」上において、各ベンダが、本仕様書に準拠しているシステムを提供する
・各市区町村は、本仕様書に準拠しているパッケージシステムをカスタマイズすることなく利用することを想定している。
市区町村においては、人口減少による労働力の供給制約の中、システムについて十分な知見がなくても、負担なくシステムを調達し、利用できることが望ましい。自治体としては、標準化後にシステム更改を行う際は改めて本仕様書に示した個別の要件を一々提示してRFI (request for information)やRFP (request for proposal)、更にはFit & Gap分析を行って調達するのではなく、単に、本仕様書に準拠しているパッケージシステムであることを要件に付するだけで、調達を行うことができ、カスタマイズをすることなく利用できることを想定している。本仕様書は、本仕様書における機能さえあればカスタマイズなしで支障なく業務が行えるようになるよう、【実装必須機能】と【実装不可機能】をその理由とともに整理したものである。そのため、自治体内での検討や自治体・戸籍ベンダ間の協議の際に、仮に本仕様書における機能と異なる機能が必要ではないかという議論があった場合、限られた人員、財源の中で、果たして当該自治体だけ特別に必要な機能なのか、本仕様書が想定する業務フローを参照し、効率的な業務運用への見直しが必要ではないか、という観点から、本仕様書における必要/不要の整理を知るための資料として参照することも想定している。
(4)本仕様書の改定
本仕様書については、制度改正時のほか、市区町村や戸籍ベンダからの創意工夫によるシステムの機能改善等の提案がある場合や、新たな技術が開発されるなどデジタル化の進展等がみられる場合にも、関係者の関与の下で改定することを想定している。とりわけ、制度改正により本仕様書を改正する必要がある場合は、制度の施行時期を勘案して改定する。改定後の本仕様書に基づいて、戸籍ベンダがクラウド上で一括してシステムを改修することにより、制度改正等のたびごとに個々の市区町村が個別に戸籍ベンダと協議して改修を行う必要がなくなると想定される。
各市区町村の調達仕様書の範囲との関係
本仕様書を用いることにより、戸籍事務を運用することは可能であり、本仕様書の対象範囲については本仕様書に記載された内容で調達する必要がある。
しかしながら、各市区町村においては、本仕様書の対象範囲外の機能や住民記録システム、戸籍の附票システムなどと併せて調達すること、また本仕様書に規定されていない非機能要件を設けること等も想定され、各市区町村の調達仕様書の範囲と標準仕様書の範囲は必ずしも一致しないと考えられる。この場合であっても、各市区町村の情報システムの調達において、本仕様書の範囲の業務について本仕様書に記載された内容で調達する限りにおいては、このような対応も許容される。