第6章 規範レイヤー・URN・トレーサビリティ
仕様の概念は孤立して存在しない。法律が省令に委任し、省令が告示を委任し、告示が技術仕様から焼かれ、 データ項目が機能要件を参照する。本章は、この関係を機械可読に表すための規範レイヤー・URN・ リンクを定める。
6.1 規範レイヤー(L1〜L4)
各概念は規範の階層に位置づけられる。frontmatter の norm_layer で表明する。
| レイヤー | 内容 | type |
|---|---|---|
| L1 | 法律(標準化法等) | gov-law |
| L2 | 省令(標準化基準) | gov-ordinance |
| L3 | 告示(別表・細目) | gov-notice |
| L4 | 技術仕様正本(機能要件・データ要件・コード・帳票) | gov-functional-requirement / gov-schema / gov-vocab |
法的権威の向きは L1→L4(上位が下位を委任・授権する)。一方、オーサリングの流れは L4→L3である。 告示(L3)は技術仕様正本(L4)の法定レンダリングであり、人が告示を手書きするのではなく、L4 から焼く (§6.4)。
6.2 URN 体系
概念の識別子は URN で与える。名前空間オーナーは**国(gov)**である。全自治体が同一の 001-00020 氏名
を共有できるのは、それが 1 つの国の標準だからであり、自治体は適合する側で名前空間オーナーではない。
よって正本はすべて urn:jp:gov:... で始まる。
固定プレフィクス urn:jp:gov: の後、広→狭で降りる(粗くて安定した軸を先に)。
(1) 標準概念系(業務スコープ):
urn:jp:gov:std:{業務コード}:{種別}[:{id}]
| 概念 | URN 例 |
|---|---|
| 業務索引 | urn:jp:gov:std:001:business |
| データ要件スキーマ | urn:jp:gov:std:001:schema |
| コード語彙 | urn:jp:gov:std:001:vocab:004 |
| 機能要件 | urn:jp:gov:std:001:func:0010580 |
(2) 法令系(法令 ID スコープ):
urn:jp:gov:{law|ordinance|notice}:{法令ID}[#フラグメント]
| 概念 | URN 例 |
|---|---|
| 法律 | urn:jp:gov:law:503AC0000000040#art6 |
| 省令 | urn:jp:gov:ordinance:508M60000008031#art4-1 |
| 告示 | urn:jp:gov:notice:508_soumu_99#bt1-0010580 |
フラグメントで条・号・別表行を指す(#art6/#art4-1/#bt1-0010580)。urn:jp:lg:{団体コード}:...
(自治体独自定義レイヤー)は将来の予約であり、本書では定義しない。
6.3 トレーサビリティのキー
概念間の関係は frontmatter の URN 配列、または本文の Markdown リンクで表す。
| キー | 意味 | 値 |
|---|---|---|
authority | 上位規範根拠(委任元) | URN 配列 |
governs | この規範が適用される下位概念 | URN 配列 |
renders_to | この概念が焼かれる法的文書(告示) | URN 配列 |
related | 関連概念 | URN 配列 |
business | 所属業務(gov-business 参照) | URN |
データ要件側の各項目の spec_ref(機能 ID 群)と、機能要件側の managed_items[].field は双方向に
リンクする。この双方向リンクは原本データ由来であり、人工的に作るものではない。
6.4 告示プロジェクション
技術仕様正本(L4・機能要件)は、その一部を告示別表(L3)へ焼く。どのフィールドを焼くかを frontmatter
projection が宣言する。
renders_to:
- urn:jp:gov:notice:508_soumu_99#bt1-0010580 # 焼き先(告示別表)
projection:
notice_legal_fields: [機能要件, impl_class, compliance_date, managed_items] # 焼く(法的)
technical_only: [要件の考え方, validations, related] # 焼かない(技術補足)
notice_legal_fields: 告示別表に出力される法的フィールド。byte 保持(第4章 §4.5)。technical_only: 技術仕様にのみ存在する補足。告示には焼かない。- round-trip 検証: projection で生成した告示別表行を、配布告示原本と byte 比較する。一致すれば 「テキスト正本から告示を正しく焼ける」ことが保証される(第9章)。
6.5 リンクは壊さない
URN・機能 ID・項目 ID・章節番号は他文書からの参照キーである。改訂時にこれらを安易に振り直すと参照が 壊れる。既存の識別子は温存し、新規概念にのみ新しい識別子を与える(第4章 §4.2 と一貫する原則)。