その他留意事項

早期に着手する必要がある作業

ガバメントクラウドへの移行においては、各地方公共団体で目標とする移行時期までの作業を平準化するため、実施可能な作業から取り組むことが重要となる。特に各種調査や、現行システムの事業者、他の事業者との意見交換も積極的に実施し、移行準備に着手することが望ましい。

「4.ガバメントクラウド移行計画」、「5.予算要求・調達」については、単年度移行とするか、複数年度移行とするかも含めた移行時期や、予算計上時期、移行対象システムの特定について事業者から情報収集を行う観点からも、早期に着手することが望ましい。この際、標準化の取組において実施した現況確認の結果も踏まえて作業を進めること。なお、標準化手順書「第2章3.(1)②現行システムの概要調査」において、確認済の項目については、表8-1で再度確認する必要はない。

表 8‑1 現行システム確認の作業項目

No 項目 単位 内容 備考
① 移行対象システムの特定 業務システムごと 移行対象の現行システム構成は可視化されているか サーバー管理台帳等を活用
② 移行対象の現行コアアーキテクチャ(システムを構成する要素とその関係を表現したシステム全体の構造)は可視化されているか フロントからバックエンド処理まで
③ 移行対象の現行の外部システム間の関連性は可視化されているか システム間における連携方式、処理タイミング、文字コード変換等を含む
④ 移行対象の現行運用方法は可視化されているか 運用体制、障害発生時の対応や、パッチリリース等の保守対応等
⑤ 移行対象の現行SLAが可視化されているか

サービスレベル(稼働率目標や耐障害性設計)、運用設計(バックアップ取得頻度やインシデント管理方法等)、DR等

⑥ 移行対象がパッケージの場合はパッケージがガバメントクラウドに対応可能であり、開発者の移行への支援が用意されているか そのパッケージソフトをガバメントクラウド上で稼働させるためのバージョン、システム構成、留意点、クラウドサービス利用料に関する情報、環境セットアップへの支援等
⑦ 利用者数 業務システムごと 現在の利用者数、アクセス数等利用状況は可視化されているか
⑧ 使用容量 業務システムごと 現在のディスク使用量は可視化されているか
⑨ 運用コスト 業務システムごと 現在の利用料(運用コスト)の「年間の総額」は可視化されているか 現在のシステム運用経費(基盤に係る部分)、ハードウェア保守経費、ハードウェア借料、ソフトウェア借料、サービス利用料、通信回線料、施設利用経費
⑩ 運用フロー 業務システムごと 現在の運用フローは可視化されているか

以下のような職員業務の運用改善等の視点も入れること

  • 現状の運用における課題の可視化

  • ガバメントクラウド移行前後の作業の増減

⑪ 他システムへの影響 業務システムごと 移行対象システムと連携するシステムがある場合、移行対象のシステムがガバメントクラウドに移行することによる影響があるか 連携一覧等を活用
⑫ 現在のネットワークの帯域、通常業務時間帯の帯域使用率 業務システムごと 現在の業務システム接続に係るLAN又はWAN帯域使用量、業務時間内外の帯域使用率は可視化されているか  
⑬ オールインワン/マルチベンダー 業務システムごと オールインワンパッケージで構成しているか、複数システムを組み合わせて構成しているか(マルチベンダーでのシステム構成か)  
⑭ 端末、周辺機器(プリンタ、スキャナなど) 業務システムごと 業務システムごとにどのような端末や周辺機器を使用しているか

ガバメントクラウドへの移行システムを選定する際は、現行システムの開発・保守を行うASPと相談しながら選定すること。

また、システムの標準化対応とガバメントクラウド移行を同時に行う場合又はガバメントクラウド移行後にシステムの標準化対応を行う場合は、標準化後のシステム構成やアーキテクチャについても確認する必要がある。

表 8‑2 システム移行計画の検討項目

No. 項目 単位 内容 備考
① 移行スケジュール 業務システムごと 移行難易度や移行優先度を踏まえ、本番切り替え時期や本番データの準備(データ移行)等を加味したスケジュールを作成する。
② 移行先のCSP選定 全体or業務システムごと 移行先のCSPを選定する。 マルチCSPとした場合、CSP間の通信コストや連携方法等の課題が増えるため、その点も考慮して選定すること。
③ 移行パターン選定(アプリケーション) 業務システムごと 対象は、アプリケーション、インフラ、運用監視、ジョブ管理

ガバメントクラウド移行が困難なシステムを特定し、優先順位を決めること。

システム統廃合も意識すること。

④ 移行パターン選定(データベース) 業務システムごと データベースの移行パターンを検討する。データベース移行の有無も含めて検討する。 システム統廃合も意識すること。
⑤ データ移行(データベース) 業務システムごと ③④の検討の結果、データベースを移行する場合、移行後のデータ項目及び連携項目を検討する。 データ移行後の移行結果検証についても検討すること。
⑥ システム全体像 全体
又は
業務システムごと
現行システムの利用状況を踏まえ、ガバメントクラウド移行時のシステム全体構成及び全体ネットワーク設計を作成する。
⑦ 移行作業ボリューム 業務システムごと 移行作業における技術的な観点を洗い出し、ガバメントクラウド移行作業ボリュームを検討する。  
⑧ 移行における影響箇所の特定 業務システムごと ガバメントクラウド移行における、影響箇所を特定する。また、新旧並行稼働の可否及び並行稼働をする場合は新旧切り替えタイミングを策定する。 並行稼働ではオンプレミス環境とガバメントクラウドでのデータの同期が必要となり、難易度が高くなることを考慮すること。
⑨ 移行における運用変更点 業務システムごと ガバメントクラウド移行後のソース管理、リリース自動化(CI/CD)等、運用フローへの影響箇所を特定する。
⑩ 全体運用構成 業務システムごと ガバメントクラウド移行におけるテスト環境を含めた全体運用構成を検討する(開発環境、検証環境、本番環境)。 テスト環境、検証環境における個人情報の取扱い(データの秘匿・保護)への対応も検討すること。
⑪ 利用方式 業務システムごと 利用方式(共同利用方式・単独利用方式)について、いずれか又は両方を合わせた利用を検討する。
⑫ DR環境 業務システムごと

DRパターンを検討する。

検討の際はコスト効果の高いパターンを選択する。

⑬ バックアップ計画 業務システムごと データバックアップ計画を策定する。利用するCSPのバックアップ機能を活用すること。
⑭ リカバリ対策 業務システムごと 移行作業時に不測の事態が発生した際に、旧環境への巻き戻し及びデータをリカバリする手段を検討する。
⑮ ネットワーク接続方法 全体
又は
業務システムごと
ガバメントクラウドへの接続方法を検討する。 接続方法によって、協議先が異なる点について留意する必要があること。
⑯ CSPサービスの利用制約 全体
又は
業務システムごと
CSPサービスの利用制約を確認し、移行計画に盛り込む。
⑰ 費用試算 全体
又は
業務システムごと
ガバメントクラウド移行後のランニングコストを試算する。 検証事業の結果(検証事業における構成図・マネージドサービス利用状況等)を参考に試算を行うこと。
⑱ 段階的移行時のデータ連携及び業務運用計画 業務システムごと システムを段階的に移行する場合に、移行業務システムと残る業務システムのデータ連携や業務運用の変更点を検討し、移行計画に盛り込む。

表 8-2の①、③、⑥、⑪、⑫、⑬、⑮及び⑰の各項目については、RFIの実施に当たって、以下の(ア)~(ク)の点を地方公共団体側で決定する必要があり、あらかじめ検討しておくことが重要である。

  1. ①移行スケジュール

 本項では、移行スケジュールを策定するに当たって、「4.1. 現行システム確認」で選定した移行システムのボリュームを考慮して単年度で移行するか、複数年度にまたがって移行するかの観点に留意し、ASPと検討すること。

  1. ③移行パターン選定(アプリケーション)

本項では、移行方式(Aパターン/Bパターン)、ガバメントクラウドへの移行パターン、ガバメントクラウドへのリフトの方針を計画する。パターンはコストやスケジュールに大きな影響を与えるため、早期に確定する必要がある。

ガバメントクラウドへの移行方式Aパターン、Bパターンについては、「2.本手順書の全体像 (3)移行方式に応じた作業項目」を参照すること。

  1. ⑥システム全体像

本項では、ガバメントクラウド移行後の構成を検討する。ガバメントクラウド移行後のサーバー構成、ネットワーク構成、ソフトウェア構成、利用するサービス等を把握することができる移行後のシステムのシステム構成図を作成すること。併せて「表8-2 ⑩全体運用構成」を検討し、検証環境、開発環境を含めた全体の運用構成も策定すること。システムの提供や保守に複数の事業者が関係する場合は、事業者間の役割分担や効率の良い接続方法等を検討する必要がある。システム構成図の作成に当たっては、「ガバメントクラウド利用における推奨構成」を参考にすること。

特にパッケージソフトを利用する場合については、そのパッケージソフトをガバメントクラウド上で稼働させるためのシステム構成、留意点等についてパッケージソフトの開発者と事前に連携して十分な情報をあらかじめ得ておくことが特に重要となる。

また、システム構成図を基にガバメントクラウドと地方公共団体の環境をつなぐ回線の見積り等を行っていくため、なるべく早い段階で作成することが望ましい。

  1. ⑪利用方式

地方公共団体がガバメントクラウドを利用する際は、ガバメントクラウド共同利用方式又はガバメントクラウド単独利用方式のいずれか若しくは両方を合わせた方式によりガバメントクラウドを利用することになる。「地方公共団体標準準拠システムのガバメントクラウドの利用について 3.1.4 ガバメントクラウド共同利用方式の推奨」では、ガバメントクラウド共同利用方式を選択することを推奨している。利用方式については、ASPと検討の上、決定すること。

ガバメントクラウド共同利用方式を採用した場合の団体間のシステム分離方法の詳細については、「ガバメントクラウド利用における推奨構成」を参照すること。

  1. ⑫DR環境

地方公共団体は、ガバメントクラウド利用に当たり、DR環境の計画を立てる必要がある。DR環境のパターンによりコストが大きく変わるため、GCASポータルに公開されている技術情報を前提に、ガバメントクラウド運用管理補助者やASPと相談し、システムの規模や、システムに求められる可用性を検討し選定すること。また、システムの標準化対応を行う場合は、策定したDR環境の計画が「地方公共団体情報システム非機能要件の標準」に適合していることを確認する必要があるため、計画の段階から当該資料を参照すること。

構成の検討にあたっては「ガバメントクラウド利用における推奨構成」を参照すること。

  1. ⑰費用試算

本項では、ガバメントクラウド移行に係るイニシャルコスト及び移行後発生するランニングコストの試算を行うこととなる。試算すべき項目は、主に以下のとおりである。なお、必ずしも、以下の経費項目の全てを算出する必要はない(データ移行費やハードウェアに関連する費用、データセンターに関連する費用はガバメントクラウド移行後のシステム構成によっては発生しない場合もある。)。

費用の試算は、ガバメントクラウドへ移行するか否かの判断材料の基礎資料となるため、事業者に費用対効果の高い手法で提案するように依頼すること。共同利用方式を採用する場合は、費用按分効果を考慮した試算を依頼すること。

また、CSP料金の見積りツールによる試算の詳細は「8.(5)CSP料金見積りツールによる試算」を参照されたい。

  1. ⑬バックアップ計画

ガバメントクラウドの利用に当たり、地方公共団体はバックアップ計画を立てる必要がある。バックアップ計画の策定にあたり、ガバメントクラウド手続き概要「2.1.1 ガバメントクラウド利用の準備 (7) クラウドに適したバックアップの検討」を参照のうえ検討すること。また、システムの標準化対応を行う場合は、策定したバックアップ計画が「地方公共団体情報システム非機能要件の標準」に適合していることを確認する必要があるため、計画の段階から当該資料と併せて検討すること。

  1. ⑮ネットワーク接続方法

地方公共団体は、庁舎からガバメントクラウドへの接続方法及びシステムの構築、保守を担当するASPの拠点からガバメントクラウドへの接続方法を検討することが必要となる。ネットワーク接続は「表 8-2 ⑥システム全体像」と関連するため、併せて検討することが望ましい。接続に係るコストを考慮し、回線を共同利用する方式を検討すること。ネットワークはランニングコストに大きく関係すること、また、設計に考慮漏れ等がある場合、障害等につながることもあるため、運用を検討すること。なお、「8.(4)ネットワーク接続方法」についても参照されたい。

ガバメントクラウド移行パターン

ガバメントクラウドへの移行パターンについては、ガバメントクラウド手続き概要「2 システム計画」に記載のとおり。

ガバメントクラウドへの移行と標準化・共通化システムへの移行を並行して検討する場合、移行方法としては、表 8-3に示す9つのパターンがあると考えられる。リフト・シフトを同時に実施しない場合は、連携先の変更、動作確認等利用環境の変更による作業が、リフト・シフト同時実施と比較して多くなる可能性があることに留意が必要である。また、新旧システムの並行稼働をする場合、オンプレミス環境とガバメントクラウドでのデータの同期が必要となり、稼働難度が高くなることにも留意すること。

これらの理由により、リフト・シフトは同時に実施することが推奨される。ただし、移行時期によっては移行作業が集中することも考えられるため、その場合はリフト後に段階的にシフトする表 8-3のパターン②もASPと相談して検討すること。

一方で、現行環境がメインフレーム等の非オープン系システムの場合は、移行に相当程度の期間を要することが考えられる。

同様に、オープン系システムであっても独自開発システム(パッケージシステムを○○市版等として個別の改修を続けることでパッケージの原型を留めていない場合を含む。)を用いている場合においても、移行に相当程度の期間を要することが考えられる。

このような場合は、例えば、標準準拠システムへの一連の移行作業の中で、オープン系パッケージシステムへの移行を行ったり、稼働そのものは行わなくてもオープン系パッケージシステムのデータ形式にデータ移行する作業を進めたりすることで、標準準拠システムへの移行に当たっての作業時期の分散・前倒しを図ることが可能と考えられる。

表 8‑3 標準準拠システムへの移行方法

パターン 概要
①

ガバメントクラウドリフト・シフト同時型

ガバメントクラウドへの移行(リフト)と標準準拠システムへの移行(シフト)を同時に行う

②

ガバメントクラウドリフト→シフト型

ガバメントクラウドへリフト→ガバメントクラウド上で標準準拠システムへシフト

③

独自環境リフト・シフト→ガバメントクラウドへリフト型

独自環境にリフト・同環境上で標準準拠システムへのシフトした後、ガバメントクラウドへ一斉に又は段階的にリフトする

④

独自環境リフト・シフト同時型

独自環境へリフト・同環境上での標準準拠システムへのシフトを同時に実施

⑤

独自環境リフト→ガバメントクラウドリフト・シフト同時型

独自環境へのリフト→ガバメントクラウドへリフト・標準準拠システムへのシフトを同時に実施

⑥

独自環境リフト→シフト型

独自環境へのリフト→同環境上での標準準拠システムへのシフト

⑦

現行環境シフト→ガバメントクラウドリフト型

現行の環境上で標準準拠システムへのシフト→ガバメントクラウドへのリフト

⑧

現行環境シフト→独自環境リフト型

現行の環境上で標準準拠システムへシフト→独自環境上での標準準拠システムへリフト

⑨

現行環境シフト型

現行の環境上で標準準拠システムへのシフト

DR環境

クラウドのDR環境は、オンプレミス環境のような本番環境と同環境を用意する考え方と違い、データコピーの容易性、環境構築の俊敏性、リソースの柔軟性等、クラウドの特徴を活用し検討することに加え、DR環境のリージョンで利用できるサービスに不足がないことを確認しながら設計することが必要となる。また、関東圏全域といったリージョン全域にわたる大規模災害(以下「大規模災害」という。)への対策を想定するか否かもシステムアーキテクチャ、システム構成及びコストに大きな影響を与えるために重要な要素となる。構成の検討にあたっては「ガバメントクラウド利用における推奨構成」を参照すること。

ネットワーク接続方法

地方公共団体がガバメントクラウド利用システムに接続する際の接続方法と接続方法ごとの内容、留意点を表8-4表 8‑4に示す。

また、最適なネットワーク接続の選定における各接続方法の特徴と留意事項については、該当するCSPの「ガバメントクラウド利用における推奨構成」も参照すること。

表 8‑4 ガバメントクラウドへの接続方法

No 接続方法 説明 備考
① 地方公共団体から専用線での接続

通信回線事業者から専用線を調達し地方公共団体の自庁舎等とガバメントクラウドを接続する方法

専用回線サービスの通信回線事業者からの独自調達を想定しており、当該専用回線サービスは回線運用管理補助者等(事業者)又は通信回線事業者と調整すること

なお、この接続方法においては複数地方公共団体で専用線を共同利用することも想定される

② ASPのデータセンターから専用線での接続

地方公共団体においてASPのデータセンター(ベンダーDC)から回線を調達する方法

ベンダーDC利用料に回線利用料も含まれている場合もある

回線の利用料については各ASPと調整すること

③ 都道府県WANを経由した接続

地方公共団体において都道府県WAN運用事業者から回線を調達する方法

回線の利用料については都道府県と調整すること

接続に係る設計や設定は利用システム側で実施する必要がある

また、各CSPによりコストやセキュリティの要件も違うため、適宜利用するCSPと相談する必要がある

④ 既に接続しているパブリッククラウドの接続回線での接続

地方公共団体において、既にパブリッククラウドに接続しており、その接続回線を活用して接続する方法

パブリッククラウドに接続している通信回線事業者と調整すること

⑤

第5次LGWANを経由して接続する方式

LGWANを経由して接続する方法

また、各接続方法の構成サンプルを以下の表8-5に示す。

表 8‑5 接続方法ごとのサンプル構成

No

接続方法 サンプル構成
① 地方公共団体から専用線での接続

![](../assets/gov-cloud-ikou-image15.png)![](../assets/gov-cloud-ikou-image16.png)

② ASPのデータセンターから専用線での接続

![](../assets/gov-cloud-ikou-image17.png)

③ 都道府県WANを経由した接続

![](../assets/gov-cloud-ikou-image18.png)

④ 既に接続しているパブリッククラウドの接続回線での接続

![](../assets/gov-cloud-ikou-image19.png)

⑤ LGWANを経由して接続する方式

![](../assets/gov-cloud-ikou-image20.png)

また、CSP間の接続を行うマルチクラウド構成とする場合は、デジタル庁で異なるCSPと接続を行うためのネットワーク基盤であるガバメントクラウドマルチクラウドネットワーク(以下、GMCN)を提供している。

GMCNの詳細や利用申請の方法については、デジタル庁が開催する説明会等で提供している資料「ガバメントマルチクラウドネットワーク(GMCN)の概要と利用申請方法について」またはGCASガイドの案内を参照すること。また、GMCNの利用は任意である。

CSP料金見積りツールによる試算

クラウドサービス利用料についてはCSP料金見積りツールを用いた見積りを原則としているため、システム構成の詳細な洗い出しが必要となる。

なお、見積りに当たっては、以下の料金見積りツールを利用する。また、デジタル庁から「ガバメントクラウドの適切な利用によるコスト最適化のアプローチガイド」を提供しているので、見積りの精査に当たっては参考にされたい。

https://calculator.aws/#/

https://cloud.google.com/products/calculator/

https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/calculator/

https://www.oracle.com/jp/cloud/costestimator.html

料金見積りツールを用いて試算を行うためには利用サービス、リソースの詳細が必要となる。利用サービスの特定は各移行対象システムのユースケースから適切なサービスを特定することが重要である。リソースの詳細については必要なリソースを整理したリソース一覧を作成し、リソースの詳細な設計を行うことが重要である。ここでいうリソースはインスタンス、ストレージ、データベース、ネットワーク等のことを示している。リソースの利用量に加えて、リソースの方式、スペックや台数、データ転送量にも利用料は依存するため、適切に設定することが重要である。また、セキュリティサービス、アプリケーション統合サービス、クラウドアナリティクス及び機械学習サービス並びにマネージメント及び監視サービスについてもクラウド利用料を見積るに当たり必要な観点である。

各CSPにおいてこれらのサービスは多岐にわたり、一部サービスにおいては料金見積りツールが対応していないものもあるほか、サービスごとに異なる料金モデルが適用されるため、サービスごとの公式ドキュメントを参照するか、クラウドサービスに明るい事業者に相談の上、費用見積りを作成されたい。

表 8-6に、クラウド利用料を見積るに当たり必要な観点の一例を示す。

表 8‑6 クラウド利用料を見積るに当たり必要な観点

リソースカテゴリ 見積りに必要な観点

仮想マシン(計算リソース)

CPUのタイプ、数

メモリ容量

仮想マシンストレージ容量

ネットワーク帯域(送受信量)

クラウドストレージ

ストレージタイプ

容量

IOPSや同時接続数

データベース

データベースサイズ

リクエスト数

データ転送量

ネットワーキング

ネットワークの接続タイプと数

ネットワーク帯域

データ送受信量

ロードバランシングのリクエスト量、データ転送量

必要な情報を洗い出してから、クラウドサービス利用料の算出に必要な情報を整理すると手戻りが発生しにくいため、各CSPの料金見積りツールを事前に確認するとよい。ガバメントクラウドにおける各CSPの基本的なサポート費用について、現時点においては、デジタル庁が負担する方針となっているため、クラウドサービス利用料には含めなくてよい。

クラウドサービス利用料においてデータ転送量の予測が困難なケースもあると想定されるが、可能な範囲で利用料を積算されたい。

ガバメントクラウドで払い出されるクラウド環境への制限事項

ガバメントクラウド利用組織に払い出すクラウド環境はガバナンス・セキュリティに係るポリシーが設定されている。主な設定は、ガバメントクラウド手続き概要「5.1.3 アカウントのポリシー設定」に記載のとおり。

調達仕様書への記載を検討する必要がある事項

契約事業者に対する調達仕様書として記載を検討する必要がある項目について表 8-7に記載する。適宜調達仕様書作成の参考とされたい。

  1. アプリケーションとセキュリティ

アプリケーションとセキュリティにおける要件として記載を考慮する必要がある項目を下表に示す。地方公共団体の調達仕様書に必要な要素に対して網羅性を担保するものではなく、参考情報として活用した上で、必要に応じて調達仕様書の記載内容を検討されたい。

表 8‑7 調達仕様書に最低限記載を検討する内容

区分 概要
クラウド上で稼働するアプリケーションについて

モダンアプリケーションとすること。

なお、標準準拠システムにおいては、「モダンアプリケーションとすること」については目標という位置づけであり、令和7年度末までの実装を目標とされたい。

モダンアプリケーション化の要件事項として以下を参照

  • オンプレミス時代の旧来技術・運用を単純に踏襲しないこと。

  • 単なるシステム監視ではなく定量的計測を行うこと。

  • セキュリティ対策をクラウドに最適化させること。

  • 開発プロセスをクラウドに最適化させること。

稼働日で完成ではなく日々の運用で改善していくこと。コンサルティング事業者など、移行作業を支援する事業者を調達する場合や、移行作業後の運用を長期間にわたってASPに依頼する場合に記載を推奨する要件項目である。
セキュリティについて 各地方公共団体が定める情報セキュリティポリシーを考慮すること。
ガバメントクラウドの設定するルール、ポリシー等を継続的に遵守すること。テンプレート適用の更新やその他のセキュリティの更新が想定されるため、継続的にルール、ポリシー等を遵守する要件を推奨する。
責任共有モデルによる対象の絞り込みを行うこと。
CSPのリファレンスアーキテクチャに準拠すること。
境界型セキュリティのみに依存しないセキュリティ対策を行うこと。
予防的統制と発見的統制を実施すること。
ガバメントクラウド上の利用システム環境をセキュアに管理するため、管理者アカウントは多要素認証を必須とすること。
セキュリティ対策の自動化を行うこと。
サーバーを構築しないアーキテクチャの採用を原則とすること。
IaCとテンプレート適用による主要セキュリティ対策のデフォルト化と適切なセキュリティ管理を行うこと。
ダッシュボード等を活用したシステムの定量的計測を行うこと。
セキュリティ対策の継続的なアップデートへの対応を行うこと。
その他 外付けツールやベンダー作成物の著作権の帰属を明確にすること。
  1. 支援体制

クラウド移行を円滑に進め、クラウドサービスのメリットを最大限享受できるようなシステムを構築・運用できるよう、ASPへの要求事項として、クラウドサービスの導入・運用等に関する知見や実績を要件とすることが有効である。

ガバメントクラウドにおいては、デジタル庁が提供するテンプレートを基にシステム構築等を行うこととなるため、クラウドテンプレートやIaCに基づくシステム構築・管理等に関する理解も求められる。

以上の点を担保するため、実際にプロジェクトに参画する要員について、利用を想定するCSPの上級クラウド認定資格の保有を要件とすることを推奨する。IaCでクラウドインフラを開発運用するスキルが求められる等、その他どのようなスキルを要求するか、どの程度の上級クラウド認定資格数を要求するかは利用システムの特性に応じて検討すること。

  1. その他

恒常的に利用状況やKPI指標をモニタリングしながらサイジングやアーキテクチャを見直し、利用料削減策について地方公共団体と協議すること等を明記することが望ましい。

事業者に委託可能と考えられる作業の事例

図 2-1で示す項目のうち、作業を円滑に進めるため、地方公共団体が事業者又は専門的な知見を有する外部コンサルタントへ作業支援の委託を行うことも考えられる。委託項目の対象候補を表 8-8に示す。

表 8‑8 事業者への作業委託事例

No 章節番号 作業項目 補足説明
① 4.1. 現行システム確認 現行システムの事業者へ協力することや外部コンサルタントに委託することもできる。
② 4.2. システム移行計画 移行計画の策定を外部コンサルタント等の支援の下、移行計画を作成することもできる。
③ 4.3. RFI結果分析及び移行計画の評価と詳細化 移行計画の評価は外部コンサルタント等に委託することができるが、ガバメントクラウド移行の最終判断は各地方公共団体が行うこと(※一部委託可)。
④ 5.1. 移行計画に関わるイニシャルコストとランニングコストの算出 各項目のコスト算出結果を取り纏め、予算化に向けた支援を外部コンサルタント等に委託することもできる。
⑤ 6.1. GCASアカウント利用手続き・環境払い出し

環境払い出しは地方公共団体がデジタル庁に申請する想定だが、デジタル庁に報告する申請内容の準備・作成はガバメントクラウド運用管理補助者に委託することもできる(※一部委託可)。

ガバメントクラウド運用管理補助者が払い出された各CSPの環境の初期セットアップを実施することもできる。

⑥ 6.2. 回線の手配及び開通後の確認 回線の手配は地方公共団体で実施する必要があるが、開通後の確認は回線運用管理補助者が実施することもできる(※一部委託可)。
⑦ 6.3. テンプレート適用 各テンプレートの適用はCSP上の作業となるため、ガバメントクラウド運用管理補助者に委託することもできる。
⑧ 6.4. 移行作業実施 移行作業の計画及び本番移行作業等はガバメントクラウド運用管理補助者に委託することもできる。また、マルチベンダー体制を採用している場合、契約事業者間でのスケジュール調整等の工程管理は外部コンサルタント等に委託することもできる。
⑨ 6.5. 移行作業完了後確認 ガバメントクラウドへの移行作業完了の確認作業(データ移行・システム連携等)は、外部コンサルタント等に支援を委託することもできる。作業の結果確認は必ず各地方公共団体が実施すること。