1 特定個人情報の利用制限
1-⑴ 個人番号の利用制限
要点
○ 個人番号を利用できる事務については、番号法によって限定的に定められており、金融機関が金融業務に関連して個人番号を利用するのは、主として、支払調書等に顧客の個人番号を記載して税務署長に提出する場合である。→1○ また、例外的な利用について、番号法は個人情報保護法に比べ、より限定的に定めている。金融機関の場合、利用目的を超えて個人番号を利用することができるのは、①激甚災害が発生したとき等に金銭の支払をするために個人番号を利用する場合及び②人の生命、身体又は財産の保護のために個人番号を利用する必要がある場合である。→2
(関係条文)
- 番号法 第9条、第30条第2項
- 個人情報保護法 第18条
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1 個人番号の原則的な取扱い
個人番号( 注)は、番号法があらかじめ限定的に定めた事務の範囲の中から、具体的な利用目的を特定した上で、利用するのが原則である。
金融機関が金融業務に関連して個人番号を利用するのは、主として、支払調書等に顧客の個人番号を記載して税務署長に提出する場合である(個人番号関係事務)。
金融機関は、個人情報保護法とは異なり、本人の同意があったとしても、例外として認められる場合を除き(2参照)、これらの事務以外で個人番号を利用してはならない。
* 金融機関は、顧客の管理のために、個人番号を顧客番号として利用してはならない。
(注) 「個人番号」には、個人番号に対応して、当該個人番号に代わって用いられる番号等も含まれる(番号法第2条第9項)。例えば、数字をアルファベットに読み替えるという法則に従って、個人番号をアルファベットに置き換えた場合であっても、当該アルファベットは「個人番号」に該当することとなる。また、個人番号の一部のみを用いたものや、不可逆に変換したものであっても、個人番号の唯一無二性や悉皆性等の特性を利用して個人の特定に用いている場合等は、個人番号に該当するものと判断されることがある。一方、金融機関が、顧客を管理するために付している顧客番号等(当該顧客の個人番号を一定の法則に従って変換したものではないもの)は、「個人番号」には該当しない。
A 個人番号関係事務(番号法第9条第4項)
金融機関が金融業務に関連して個人番号を取り扱うこととなるのが個人番号関係事務である。具体的には、金融機関が、法令に基づき、顧客の個人番号を利子等の支払調書、特定口座年間取引報告書等の書類に記載して、税務署長に提出する事務等である。B 利用目的を超えた個人番号の利用禁止
a 利用目的を超えた個人番号の利用禁止(番号法第30条第2項により読み替えて適用される個人情報保護法第18条第1項)
金融機関は、個人番号の利用目的をできる限り特定しなければならない(個人情報保護法第17条第1項)が、その特定の程度としては、利用目的を単に抽象的、一般的に特定するのではなく、個人情報と同様に、本人が、自らの個人番号がどのような目的で利用されるのかを一般的かつ合理的に予想できる程度に具体的に特定することが望ましい。番号法は、個人情報保護法とは異なり、本人の同意があったとしても、利用目的を超えて特定個人情報を利用してはならないと定めている。
したがって、個人番号についても利用目的(個人番号を利用できる事務の範囲で特定した利用目的)の範囲内でのみ利用することができる。利用目的を超えて個人番号を利用する必要が生じた場合には、当初の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲内で利用目的を変更して、本人への通知等を行うことにより、変更後の利用目的の範囲内で個人番号を利用することができる(個人情報保護法第17条第2項、第21条第3項)。
- * 前の保険契約を締結した際に保険金支払に関する支払調書作成事務のために提供を受けた個人番号については、後の保険契約に基づく保険金支払に関する支払調書作成事務のために利用することができると解される。
- * 金融機関が顧客から個人番号の提供を受けるに当たり、想定される全ての支払調書作成事務等を利用目的として特定して、本人への通知等を行うことが考えられる。なお、通知等の方法としては、従来から行っている個人情報の取得の際と同様に、利用目的を記載した書類の提示等の方法が考えられる。
b 合併等の場合(番号法第30条第2項により読み替えて適用される個人情報保護法第18条第2項)
個人情報取扱事業者は、合併等の理由で事業を承継することに伴って、他の個人情報取扱事業者から当該事業者の顧客の特定個人情報を取得した場合には、承継前に特定されていた利用目的に従って特定個人情報を利用することができる。ただし、本人の同意があったとしても、承継前に特定されていた利用目的を超えて特定個人情報を利用してはならない。- * 金融機関甲が、金融機関乙の事業を承継し、支払調書作成事務等のために乙が保有していた乙の顧客の個人番号を承継した場合、当該顧客の個人番号を当該顧客に関する支払調書作成事務等の範囲で利用することができる。
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2 例外的な取扱いができる場合
番号法では、次に掲げる場合に、例外的に利用目的を超えた個人番号の利用を認めている。
a 金融機関が激甚災害時等に金銭の支払を行う場合(番号法第9条第5項、第30条第2項により読み替えて適用される個人情報保護法第18条第3項第1号、番号法施行令( 注)第10条、激甚災害が発生したとき等においてあらかじめ締結した契約に基づく金銭の支払を行うために必要な限度で行う個人番号の利用に関するデジタル庁令(平成27年内閣府令第74号))
①銀行等の預金等取扱金融機関、②証券会社、③生命保険会社、④損害保険会社、⑤生命保険会社又は損害保険会社と同様の業務を行う共済団体は、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(昭和37年法律第150号)第2条第1項の激甚災害が発生したとき、又は「災害対策基本法」(昭和36年法律第223号)第63条第1項その他デジタル庁令で定める法令の規定により一定の区域への立入りを制限、禁止され、若しくは当該区域からの退去を命ぜられたときに、支払調書の作成等の個人番号関係事務を処理する目的で保有している個人番号について、顧客に対する金銭の支払を行うという別の目的のために、顧客の預金情報等の検索に利用することができる。(注)番号法施行令とは、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行令」(平成26年政令第155号)をいう(以下同じ。)。
b 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難である場合(番号法第30条第2項により読み替えて適用される個人情報保護法第18条第3項第2号)
人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるときは、支払調書の作成等の個人番号関係事務を処理する目的で保有している個人番号について、人の生命、身体又は財産を保護するために利用することができる。
1-⑵ 特定個人情報ファイルの作成の制限
要点
○ 個人番号関係事務を処理するために必要な範囲に限って、特定個人情報ファイルを作成することができる。(関係条文)
- 番号法 第29条
● 特定個人情報ファイルの作成の制限(番号法第29条)
金融機関が金融業務に関連して特定個人情報ファイルを作成することができるのは、個人番号関係事務を処理するために必要な範囲に限られている。 法令に基づき行う顧客の支払調書作成事務等に限って、特定個人情報ファイルを作成することができるものであり、これらの場合を除き特定個人情報ファイルを作成してはならない。