サプライチェーン・リスク対応における必須事項

第2章では、政府情報システムにおけるサプライチェーン・リスクの概要を記述し、サプライチェーン・リスク対応の必要性を示した。

本章では、サプライチェーン・リスク対応にあたり、効果的なセキュリティ対策を実施するためにまず取り組むべきと考えられる事項を記述する。

総合的なリスクアセスメントの実施

サプライチェーン・リスクは、本書でもビジネスサプライチェーン・リスク、サービスサプライチェーン・リスク、機器・ソフトウェアサプライチェーン・リスクの3つに分類したとおり、異なる領域にまたがる。また、サプライチェーン・リスク以外でも、様々なセキュリティリスクがある。そのため、サプライチェーン・リスク以外のリスクも含めて、政府情報システムに係るリスク全体に関する総合的なリスクアセスメントを確実に実施することが重要である。特に、業務委託先やクラウドプロバイダなどの外部の機関が関与する場合、その相手先でのセキュリティ対策などを適切に把握することが求められる。なお、リスクアセスメントについては、「政府機関等の対策基準策定のためのガイドライン」[^4]、「DS-201政府情報システムにおけるセキュリティリスク分析ガイドライン~ベースラインと事業被害の組み合わせアプローチ~」[^5]などの政府機関等向けのリスクアセスメントに関する基準やガイドラインを参考にされたい。

委託先等との協力体制の強化

サプライチェーン・リスクを軽減するためには、委託先、サプライヤー、サービス提供者などとの緊密な協力が不可欠である。契約書の中に情報セキュリティ条項を明確に盛り込むだけでなく、定期的なリスクレビューの実施や緊急時を含めた連絡体制の確立も重要である。また、委託先等のセキュリティ体制やインシデント対応能力を評価し、必要であれば改善を促す取組が必要である。

これらの取組を効果的に実施するためには、日々のコミュニケーションを通じて信頼関係を構築・強化し、効率的な協力体制を構築することが重要である。

継続的な監視と評価の重要性

サプライチェーン・リスクは動的なものであり、技術の進化や新たな脅威の発生により、リスクの性質や影響範囲が変化することがある。そのため、初回のリスク評価や対策実施にとどまらず、継続的な監視と再評価を行うことが重要である。特に、新しい機能の導入や既存のサービスのアップデートが行われた際などには、速やかに既存のリスクを含めて、リスク評価を更新するプロセスを設けることが有効である。また、併せて、リスクに関する情報を集約し、関係者全体で共有することができる体制構築も重要となる。

インシデント対応計画の整備

サプライチェーン・リスクが顕在化した場合の対応を適切に行うために、あらかじめインシデント対応計画を整備しておくことに留意する必要がある。インシデント対応計画には、インシデントの検知、報告、対応、復旧の手順を明確に定め、委託先等の関係者との協力体制を事前に整えておく必要がある。また、インシデント対応計画は定期的に見直し、演習を通じて関係者が迅速に対応できるようにしておくことが重要である。

まとめ

サプライチェーン・リスクへの対応は、組織内外を問わず、多くの関係者との協力と継続的なリスクマネジメントが必要である。総合的なリスクアセスメントの実施、業務委託先等との協力体制の強化、継続的な監視と評価、そして、インシデント対応計画の整備といった取組に留意しながら進めることで、より堅牢なサプライチェーン・リスク管理体制を構築することが可能である。

これらの取組が、次章に記述する各セキュリティ対策がより効果的なものとなり、政府情報システムにおけるセキュリティ水準の向上に努めることが期待される。