第3章 予算及び執行
予算マネジメントの基礎
PJMOが行う予算マネジメントにおいて、必要な要素は以下のとおり。
1) コスト分解の徹底
**すでに存在しているシステムについては、整備や運用に要したコストを作業工程単位や機器・ソフトウェア単位まで分解するなど、システムのコスト実態の把握に努める(1)**こと。
2) 運用実態の把握・検討
**当初の想定と実際のシステムの運用状況とに相違がないか、業務とシステムの動きが乖離していないかについて、調査・検討しておく(2)**こと。
3) システム資産台帳、設計書等のドキュメント類の整備
**新規参入業者にとってリスク要因と捉えられないように、システム資産台帳、設計書等のドキュメント類の整備に努める(3)**こと。
4) 調達方法・契約方式の検討
**予算要求段階から、どのような調達方法・契約方式にするのか、単年度契約なのか複数年度契約なのかなど、あらかじめ検討しておく(4)**こと。
5) 最新のアーキテクチャの動向に関する情報の入手・活用
**デジタル分野は常に新たな発想に基づく技術や仕組みが生み出されている分野であるため、常に最新の情報を把握するとともに、デジタル庁から提供される情報も含め、予算や調達への活用に努める(5)**こと。
6) 予算編成日程、予算執行日程の把握・整理
予算編成や予算執行に関する作業日程を念頭に作業を行うこと。
**また、予算執行日程について、デジタル庁から予算の移替えを受けている場合には、デジタル庁から示される移替えの日程を念頭に、調達スケジュールを検討しておく(6)**こと。
1. 趣旨
PJMOがプロジェクトを着実に進めていくためには、必要な予算を確保し、その予算をいかに効率的に執行できるかが重要です。自システムの予算の検討には以下の点について留意が必要です。
- 予算ガバナンスの基礎
予算ガバナンスの基礎
予算及び執行の業務を遂行するには、PMOの役割も重要です。PMOは財源の制約の中、プロジェクト間で如何に調整を図るかが求められる役割です。そのためには、情報システム予算に対するガバナンスが重要となってきます。そのために必要な要素を説明します。
- 各システムの機能、各システムに紐付く業務を正確に把握する
情報システムが対象としている業務内容とそのシステム化対象範囲を正確に把握しておくことは、そのシステムの費用対効果を認識する基礎となります。
また、情報システムが保有する機能を把握するともに、その機能が適切な内容であるか把握しておくことや、業務によっては、法令等に基づき期限を切られているものがあるため、その業務がシステム化対象である場合、いつまでに整備をしなければいけないのか、スケジュールを正しく把握することは、効率的なシステム投資を実現する上でも重要なことです。
特に、法令等の改正に伴い必然的に整備、改修が必要なものや、政策的な要請によって整備、改修が必要となるものが発生することがありますが、実装までの期限を切られているものが多いため、そのスケジュールを正しく把握しておくことは必須です。
- システムのコストを正確に把握する
毎年度の各システムの整備経費、運用等経費の予算額、執行実績額は、PMOの仕事として管理するすべてのシステムについての情報を把握しておく上で、重要な項目です。
また、毎年度の予算額だけでなく、過去の執行実績や将来の投資予定額についても正しく把握しておくことは、中長期的な投資計画を組む上でも必須となります。
予算額や執行額はシステム毎の総額のみ把握していれば良いと言うことではありません。調達単位毎に金額を把握しておくことで、システムが今現在どのような状態にあるのか、知ることが出来ます。
- 予算・会計制度を熟知しておく
各システムの予算確保や執行を円滑に進めるためにも、どのような場合にどの制度か活用できるのか、知っておくことが重要です。
特に計画通りに進捗しない場合で、必要な予算をどのようにマネジメントするか検討するのはPMOの役割であるため、常時、予算と執行金額の差額を正しく把握するとともに、繰越しや国庫債務負担行為など国の予算・会計制度で活用できるものを活用することは、プロジェクトの目標を達成して確実に成果に結びつけるために必要不可欠なことです。
ただし、国庫債務負担行為を活用する場合には、無理な計画や当年度の予算の不足を理由として余計に後年度に歳出化額の先送りをすることの無いようにしないと、後年度に予算確保が厳しくなることがあるので、注意が必要です。
また、予算要求日程、予算編成日程に間に合わないと、プロジェクトを推進する上で必要な予算を獲得できないことにつながるため、常に日程を念頭に置き、必要な資料の作成、見積りの取得精査等の作業について、PJMO等と連携し進めておく必要があります。
- 最新のアーキテクチャの動向に関する情報を仕入れておく
デジタル分野は常に新たな発想に基づく技術や仕組みが生み出されている分野です。
さらなる効率化や効果を得るために適用できるアーキテクチャが存在する場合には、予算要求や調達作業に積極的に適用を考える事が重要です。
最新のアーキテクチャを導入することにより、トータルコストの削減が可能であれば、その財源をさらなる新規の投資に振り向けることができる可能性があります。
また、特定のベンダーに偏らないように、デジタル庁から提供される情報も含め、中小の事業者を含め保有する技術水準や作業実績等の情報を収集しておくことも重要です。
- 各システムの投資計画を整理しておく
システム投資は新規整備やシステム更改時に費用が嵩むものの、毎年の全体の予算額が一気に増えることは想定出来ませんので、システム整備やシステム更改が一時期に集中しないように、スケジュールを調整することが重要です。特に、次期システムへの更改時期に並行稼働期間が発生する場合には、その期間内は通常時よりも余分に運用経費を要することになるため、状況によっては月単位で時期を調整する必要があります。
運用等経費についても、ハードウェアのリース期間やソフトウェアのサポート期間等の要因により、経費が増減する事があるため、その時期について把握をしておく必要があります。
- 各システムの問題点、改善ポイントを整理しておく
運用期間中に発生した問題点や、そのシステムが元々内包している課題など、改善すべきポイントを把握しておくことは、改修時期やシステム更改時に、その問題点の解消のための投資について財源との関係で調整するにあたり、必要なことです。
- 代替手段を常に考えておく
財源の制約から金額の削減をせざるを得ない状況下において、単にスペックダウンをするのではなく、代替手段により当初の目標を達成できないか検討しておくことが重要です。
また、さらなる投資余力を確保する観点からも、代替手段の検討を常にしておくことは有用と考えられます。
- 2. 解説
「すでに存在しているシステムについては、整備や運用に要したコストを作業工程単位や機器・ソフトウェア単位まで分解するなど、システムのコスト実態の把握に努める」
要求の基礎となる見積りの取得について、すでに存在しているシステムについては、漠然と事業者に依頼するのではなく、整備や運用にかかったコストについて、作業工程単位や機器・ソフトウェア単位まで分解し、システムのコスト実態を把握した上で、その結果を基に見積りを依頼することが重要です。
また、新規整備のシステムについても、「一式」表示の見積りではなく、何にどれぐらいコストを積算しているのかについて明らかにする観点から、仕様書の項目単位で積算させるなど、コスト構造を徹底的に分解して取得することが必要です。
「当初の想定と実際のシステムの運用状況とに相違がないか、業務とシステムの動きが乖離していないかについて、調査・検討しておく」
すでに運用段階にあるシステムの場合、当初の想定と実際のシステムの使用状況と相違がないか、特に、当初の想定より使用頻度の低い機能があれば、その原因を分析することが、改修コストや次期システムの整備コストを下げる上でも重要です。
また、ユーザ視点に立ったときに、業務とシステムの動きが乖離している場合、システムに原因があるのか、業務自体の改革が必要なのかについて検討の上、システム化対象範囲の見直し等を検討しておくことで、効率的なシステム投資が可能となります。
業務に起因する改修が定期的に発生する場合、当然のこととして捉えるのではなく、見直しの余地がないか検証することで、投資余力を他に振り向けることが出来ます。
また、調達単位が大きなシステムは、新規参入の障害となる可能性が高くなるとともに、業務見直し自体にもシステム起因で障害となることがあるため、必要に応じて業務単位毎に分解し、機能同士の疎結合化、モジュール化を図るように検討を進めることも重要です。
「新規参入業者にとってリスク要因と捉えられないように、システム資産台帳、設計書等のドキュメント類の整備に努める」
システムに関するドキュメント類が事業者任せになっていて整備されていない場合、2社以上の見積りを取るにしても、新規参入事業者にとってリスク要因と捉えられ、結果として単に既存事業者が価格面で有利になって、その価格が妥当にみえてしまうことがありますので、適正な価格で調達するためにも、ドキュメント類の整備は重要です。
「予算要求段階から、どのような調達方法・契約方式にするのか、単年度契約なのか複数年度契約なのかなど、あらかじめ検討しておく」
調達方法や契約方法の違いは予算措置にも影響する事ですので、予算要求段階から、どのような調達方法、契約方式にするのか、単年度契約なのか複数年度契約なのか等、あらかじめ決めておきましょう。
「デジタル分野は常に新たな発想に基づく技術や仕組みが生み出されている分野であるため、常に最新の情報を把握するとともに、デジタル庁から提供される情報も含め、予算や調達への活用に努める」
デジタル分野は常に新たな発想に基づく技術や仕組みが生み出されている分野です。
さらなる効率化や効果を得るために適用できるアーキテクチャが存在する場合には、予算要求や調達作業に積極的に適用を考える事が重要です。
最新のアーキテクチャを導入することにより、トータルコストの削減が可能であれば、その財源をさらなる新規の投資に振り向けられる可能性があります。
また、特定のベンダーに偏らないように、中小の事業者を含め保有する技術水準や作業実績等の情報を収集しておくことも重要です。
情報収集に当たっては、情報の偏りを防ぐ観点からも、事業者任せにするのではなく、PJMO職員自ら積極的に行うようにしましょう。
「予算編成や予算執行に関する作業日程を念頭に作業を行う。
また、予算執行日程について、デジタル庁から予算の移替えを受けている場合には、デジタル庁から示される移替えの日程を念頭に、調達スケジュールを検討しておく」
予算要求日程、予算編成日程に間に合わないと、プロジェクトを推進する上で必要な予算を獲得できないことにつながるため、常に日程を念頭に置き、必要な資料の作成、見積りの取得精査等の作業を進めておく必要があります。
予算編成や予算執行に関する作業日程については、常にPMOと意思疎通を図り日程感を合わせておくことが重要です。
また、予算執行日程については、デジタル庁から予算の移替えを受けている場合には、移替えの日程を念頭に調達スケジュールを検討しておかないと、契約時点で金額の裏付けとなる予算が無く、必要な調達が出来ないということにもなりかねませんので、日程を常に把握しておくことは重要です。
予算要求の対象の特定
PJMOは、**予算要求に先立ち、プロジェクト計画書及びプロジェクト管理要領を確認し、プロジェクトの内容や進め方等を踏まえ、情報システム関係予算の要求対象を特定する(1)ものとする。また、PJMOは、予算要求の内容について漏れがなく、かつ、重複がないよう、PJMO内の各担当と確認及び調整を行う(2)**ものとする。
また、デジタル庁システムが保有する共通機能との連携・活用を行う場合は、デジタル庁の各担当と確認及び調整を行う。
- 1. 趣旨
プロジェクトは一様ではなく、その特性、規模、実現方法等は様々である。これらの特性等を十分に理解せずに予算要求を行うと、予算額が足りずにプロジェクト運営に支障をきたすことや、逆に予算額が過剰となり必要とされる以上の機能やサービスを調達する等の過大投資や適正な価格での調達がなされず、合理的な調達がなされないなど、事業の効果的・効率的な執行を図る観点から問題となることにつながりかねない。
このため、予算要求に向けた準備活動の中では、予算要求の対象として「どういった目的・目標で、いつ、どの経費を、どの範囲で」要求するかを明確にし、関係する各担当と十分に調整することが重要である。
- 2. 解説
「予算要求に先立ち、プロジェクト計画書及びプロジェクト管理要領を確認し、プロジェクトの内容や進め方等を踏まえ、情報システム関係予算の要求対象を特定する」
「予算要求に先立ち」とは、予算要求に関する活動を開始するときを指す。開始時期は、PMOが定める予算要求のスケジュールや、それに先立つ資料の準備、ベンダーからの見積り取得等に要する期間を踏まえて、決定する必要がある。特に新規に開始するプロジェクトにおいては、事業の目的や目標を踏まえた、プロジェクト計画、サービス・業務企画の方向性、システム化の範囲や概要等、多くの内容を検討する必要があるため、予算要求の前年度又は前々年度から検討に着手する等、十分な事前検討を行う期間と体制を確保するように留意する。
「情報システム関係予算の要求対象を特定する」とは、プロジェクトの目標を達成するために必要な組織、機能、資材などのプロジェクトの全体像(ビジネスモデル)を把握した上で、情報システムが担う部分を特定し、これらを実現するために必要な情報システム関係の調達内容や調達時期を整理する。これにより、調達の全体像を把握するとともに、当該年度の予算要求で要求する調達対象を特定することをいう。特に、複数年にわたり調達が必要となる情報システム関係予算について可視化することで、後年度に必要となる予算要求を把握する。
情報システム関係の調達に必要となる経費と予算要求対象の関係について、その例を図3-1に示す。
- 図3-1
-
N-2年度に「計画策定支援委託」を実施する。この委託業務に必要となる経費に対して、N-3年度に予算要求を行う。
-
N-1年度からN年度の2年度にわたり、「設計・開発委託」を実施する。この委託業務に必要となる経費に対して、N-2年度に国庫債務負担行為を活用し2年度分の予算を確保した上で、各年度で予算要求を行う。
-
N年度からN+4年度の4年度にわたり、「ハードウェア・ソフトウェア等の賃貸借・保守」、「サービス利用」、「アプリケーション保守委託」及び「運用支援委託」を実施する。これらの業務に必要となる経費に対して、N―1年度に国庫債務負担行為を活用し4年度分の予算を確保した上で、各年度で予算要求を行う。この例では、「サービス利用」については、単年度契約を繰り返している(単年度契約と複数年契約の使い分けは、標準ガイドライン解説書「第3編第1章2.プロジェクトの標準的な活動スケジュール」の解説を参照)。
「予算要求の内容について漏れがなく、かつ、重複がないよう、PJMO内の各担当と確認及び調整を行う」
- 参考
標準ガイドライン
別紙2「情報システムの経費区分」
「漏れがなく、かつ、重複がない」とは、プロジェクトの活動を行うために必要となる各経費について、他の経費項目や他の担当の予算要求項目との二重計上がなく、必要な項目の計上漏れもない状態を指す。
PJMO各担当は、要求する経費項目にこのような過不足が発生しないように、特に複数の部門で個別に予算要求する場合は、計上項目の分担を行った上で相互に要求内容を確認することが重要である。また、経費項目の計上漏れを防ぐためには、
プロジェクト計画書の実施計画及び別紙2「情報システムの経費区分」と調達単位で突合しながら、調達単位で確認していくことが効果的である。さらに、一つの調達に含まれる経費項目だけではなく、同一プロジェクト内で調達が複数に分かれることも考慮し確認を行う。
なお、複数プロジェクトが関連する場合や情報システム関係予算以外の予算(事業費等)と関係がある場合も、関係者間で同様に確認を行う。
- 当然増減額の整理
当然増減額の整理
- 平年度化増
すべてのシステムが4月1日より運用を開始するのではなく、多くの情報システムは、旧システムからの移行時期や、業務の繁忙期を考慮して運用開始時期を年度途中に設定している場合が多いと考えられます。また、組織が年度途中に新設される場合も考えられます。
このような場合、運用開始時期の初年度は数箇月分を計上していますので、翌年度において、12か月分に増加させる必要があります。このように経費が増額することを平年度化増といいます。
- 既往年度国庫債務負担行為の歳出化額
既往年度国庫債務負担行為に係る歳出化額は、すでに契約済みの金額であるため、契約内容に基づいて2年目以降の金額を計上する必要があります。ただし、当年度が初年度で調達前であれば、一旦当年度予算で設定された国庫債務負担行為の年割り額に基づいて次年度分の金額を計上しますが、契約が確定され次第、契約金額に置き換えます。
- 当然減の整理
システムの廃止や組織の廃止などにより、その年度で経費がかからなくなる場合、その金額が減ることになりますので、廃止時期に合わせて減額をしておく必要があります。また、リース延長により、リース料が下がることがあります。その場合も延長時期より減額して整理します。
資料の準備
PJMOは、予算要求資料を準備するときには、デジタル庁が定めるスケジュール及び提出を求める資料を確認し、**要求内容及び費用対効果の合理性が十分に判断できる資料となるよう、計画的にこれを準備する(1)**ものとする。
- 1. 趣旨
プロジェクトの目標を高い費用対効果で実現するためには、実現するサービス・業務の具体像や情報システムの具体的要件について事業者に正確に情報を伝えることで、精度の高い見積りを取得することが不可欠である。また、PJMOがこれらの情報に基づいて作成する予算要求資料は、PMOや会計担当部門等の関係者がその内容と費用対効果を適切に理解・判断できるように、正確かつわかりやすい内容でまとめることが重要である。
予算要求に必要となる資料は、サービス・業務企画(第4章)や要件定義(第5章)の作業を同時並行的に行い、各々の検討内容と連携し、整合をとりながら作成を進めることとなる。現状分析、検討、関係者調整等の作業に長い時間を要することを踏まえて、資料の準備を計画的に行うことが重要である。
- 2. 解説
「要求内容及び費用対効果の合理性が十分に判断できる資料となるよう、計画的にこれを準備する」
「要求内容及び費用対効果の合理性」とは、実現するサービス・業務の内容、効果、投資額等が、仮定や推測ではなく事実や根拠に基づいて示され、プロジェクト目標の達成に対して整合が取れていることをいう。合理性を判断する観点の例を次に示す。
-
実現するサービス・業務の内容が、社会的な要請に基づいている。
-
実現するサービス・業務の内容が、社会や利用者の価値最大化に寄与する内容になっている。
-
想定されるサービス・業務の提供レベルが、施策目的やサービス内容・目標等に鑑み、必要かつ十分であり過大になっていない。
-
想定する効果が、過去又は類似の運用実績、利用者に対する調査等の事実情報に基づいて算定されている。
-
現状の業務の課題が、現場のニーズや実態に基づいて抽出されている。
-
実現しようとしている業務プロセス・機能が、その目的に照らして必要かつ十分であり、現場等の過度な要求を反映しすぎていない。
-
実現するサービス・業務に対して、情報システムが担うべき役割、期待する効果が明確になっている。
-
要求額が、正確な情報に基づき見積もられ、詳細に精査されている。
-
情報システムに要求する機能や性能等が、運用実績や利用実績等の実データに基づいて検討されている。
「計画的にこれを準備する」とは、上述のような観点から合理性を十分に説明できる資料を作成するために、基礎的な事実情報の把握による現状分析、実現するサービス・業務の検討、関係者調整等を十分に行うための期間を確保して、資料の準備作業を計画し、実施することをいう。
なお、現在も情報システムを運用しているプロジェクトについては、情報システムの運用実績、利用実績等を日々の運用活動の中で収集し、予算要求時に活用できる情報を日常的に蓄積しておくことが重要である。
経費の見積り
PJMOは、予算要求の積算に当たって、次の[1]から[7]までに掲げる事項を遵守するものとする。なお、補正予算の場合は、予算要求までの期間が短くなるため、予算要求後にも見積りの対象や金額について精査を行う等、進め方に留意する必要がある(1)。
- **事業者から見積りを取得するときは、実現したい業務・機能の内容、規模、サービスレベル、スケジュール等、事業者が見積りをするための必要な情報の提供を行う(2)**こと。
-
**見積り金額の妥当性を確認できるように、数量、工数、作業者のレベル、単価等の積算内訳を明確にする(3)**こと。
-
**ライフサイクルコストを見積り、その根拠を明確にする(4)**こと。
-
**情報システム単位で積算し、区分できるようにする(5)**こと。
-
**「別紙2 情報システムの経費区分」に基づき区分する(6)**こと。
-
**原則として複数事業者の見積りを比較する(7)**こと。
-
**原則としてクラウドサービスの利用を前提とした見積りも取得する(8)**こと。クラウドサービスの選定に当たっては、「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」の記載に従って、適切にクラウドサービスを利用することを前提とした見積りを取得すること。
- 1. 趣旨
経費の見積りに当たっては、予算額が足りずにプロジェクト運営に支障をきたすことや、逆に予算額が過剰となり事業の効果的・効率的な執行を図る観点から問題となることがないよう、プロジェクトの内容に応じた必要十分な水準とすることが求められる。また、PMOや会計担当部門が費用対効果を正しく判断できるよう、客観的な妥当性を担保することが求められる。
このため、本項で記載した留意点を念頭に置いた上で、十分な期間を確保して計画的に経費の見積りを進めることが重要である。
なお、事業者からの見積りの取得に際し、検討内容に不足がある場合、想定と大きくかい離する見積りが提示された場合、又は、これまで検討されていなかったサービス・業務の実現に係る有用な情報を得られた場合は、「2.資料の準備」に立ち戻って再度検討を行うことが必要である。
- 2. 解説
「補正予算の場合は、予算要求までの期間が短くなるため、予算要求後にも見積りの対象や金額について精査を行う等、進め方に留意する必要がある」
「進め方に留意する」とは、補正予算の予算要求までに十分な精度の根拠に基づいた見積りが行えない場合は、予算執行までの期間にサービス・業務企画や要件定義の詳細化を図り、修正した上で、見積りの対象や金額について精査を行うことを指す。
「事業者から見積りを取得するときは、実現したい業務・機能の内容、規模、サービスレベル、スケジュール等、事業者が見積りをするための必要な情報の提供を行う」
「事業者が見積りをするための必要な情報の提供」において、既存の情報システムがあるときには、見積りを依頼する事業者に対し、秘密保持契約を結んだ上で、各種設計書等の閲覧を行わせるよう留意する。
「見積り金額の妥当性を確認できるように、数量、工数、作業者のレベル、単価等の積算内訳を明確にする」
「数量、工数、作業者のレベル、単価等の積算内訳を明確にする」とは、見積りの内訳を「一式 ○○円」といった記載にするのではなく、見積り金額を十分に精査し妥当性を確認できる粒度で内訳を記載することである。
例えば、ハードウェアやソフトウェア等を購入する場合は、購入する物品の品目それぞれに対して、数量、単価を明確にする。ただし、一体として扱える機器等について無理に分割して積算させるようなことはしない。
また、作業を委託する場合は、作業の成果物(開発する情報システムの機能等)それぞれに対して、作業内容、作業工数、作業者種別及びレベル(SE、プログラマ等)、人件費単価を明確にする。作業工数の妥当性を説明できるようにするため、工数算定の根拠を示す基本的数値及び算定方法(画面数、帳票数、LOC、ファンクションポイント等)も併せて記載する。
リース期間が満了となりその後も継続的に情報システムを利用する場合は、再リース契約等による当該物品の継続利用と情報システムの更改とを比較し、どちらがより経済的であるか検討する。
なお、制度変更が予定されているが詳細な変更内容が決定していない等、予算要求時点で情報システムに求める要件を確定できない場合がある。この場合においても、予算要求時点で判明している状況に基づいて必要と見込まれる要件を設定した上で、数量、工数、単価等の積算内訳に加え、見積り上の前提条件や制約条件を明確にした見積りを取得することが重要である。
特に、運用や保守業務における人件費の見積り取得に当たっては、実際の稼働者数と各人と稼働時間がわかるような見積りを取得する必要がある。
「ライフサイクルコストを見積り、その根拠を明確にする」
「ライフサイクルコスト」とは、情報システムのライフサイクル期間(計画・企画、設計・開発から運用・保守を経て廃止するまでの期間。標準ガイドライン解説書「第3編第1章 ITマネジメントの全体像」参照。)に発生する、情報システムに係る全ての経費を指す。
情報システムに係る経費は、導入時だけでなく、運用段階で経常的に発生する。そのため、費用対効果の判断を適切に行うためにも、情報システムのライフサイクル全体を対象とした経費を把握することが重要である。
また、ライフサイクルコストの見積りに漏れがあると、運用段階や、次期システムへの更改を検討する段階等で追加的な経費が発生し、費用対効果を損なってしまう。このようなことを未然に防止するためにも、事業者に見積りの範囲や精度などに係る根拠の明示を求め、必要な経費項目が計上されていることを確認することが重要である。
「情報システム単位で積算し、区分できるようにする」
「情報システム単位で積算し」とは、1つの情報システムIDに対応する情報システム(ある情報システムのサブシステムであって、情報システムIDを取得している場合を含む。)の単位に従って、予算の積算を行うことをいう。
「「別紙2 情報システムの経費区分」に基づき区分する」
- 参考
標準ガイドライン
別紙2「情報システムの経費区分」
「「別紙2 情報システムの経費区分」に基づき区分する」とは、情報システム単位で、かつ、「別紙2 情報システムの経費区分」で示す区分に従い、積算することを指す。
「原則として複数事業者の見積りを比較する」
「原則として」とは、複数事業者からの見積りの取得を行わない合理的な理由がある場合を例外として扱えることを示している。この合理的な理由の例を次に示す。
-
特定の事業者のみが保有する専門技術や著作権等の制約により、他事業者への見積り依頼が困難な場合
-
既存の情報システムに対する部分的な改修等、当該情報システムの設計・開発業務や保守業務を行っている既存事業者は設計情報等を熟知しているため作業を効率的に行えるが、その他の事業者は情報システム全体の設計情報等を理解するための先行的な作業に多くの工数を必要とするため、既存事業者と比べて著しく作業規模が異なり、見積りを得ることが困難な場合
-
PMO、外部組織の有識者、専門的な知見を持つ職員の助言も得ながら可能な限りの事業者へ見積り依頼を行ったが、複数事業者から見積りを得られない場合
事業者に見積りを依頼する際は、同じ粒度で見積りを比較できるように、PJMOが見積り様式を指定し事業者からの提出を求めることが望ましい。また、複数事業者の見積りから要求額を積算する際は、見積り合計額を単純に平均するのではなく、見積りの内訳項目ごとに、見積り対象や前提条件、制約条件等についても精査を行い、内訳項目単位で見積前提の整合がとれた形で比較結果を積算するなど、積算根拠の妥当性を確認することに留意する。
「原則としてクラウドサービスの利用を前提とした見積りも取得する」
- 参考
世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(平成30年6月15日閣議決定)
「原則としてクラウドサービスの利用を前提とした」とは、IT基本法第26条第2項第3号、「 世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(平成30年6月15日閣議決定)に基づき、クラウド・バイ・デフォルト原則、すなわち、クラウドサービスの利用を第一候補として検討することを指している。ただし、クラウドサービスの利用が合理的でないときは、例外として扱うことが認められることを示している。
なお、クラウドサービスの導入や事業者からの見積り取得に当たっては、「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」を参考に検討する。
PMOとの調整
PJMOは、PMOの求めに応じて必要な資料を提出し(1)、要求内容について説明を行うものとする。その際、PMO等から指摘、助言又は指導を受けた際は、必要な対応策を講ずるものとする。
また、PMOは各PJMOからの資料をとりまとめ、デジタル庁の指示に従い、提出する。
- 1. 趣旨
PMOは、府省内のIT施策に関する全体管理を行うために、各プロジェクトの費用対効果を踏まえた上で予算要求内容の確認を行い、会計担当部門と連携、協力し、予算配分を適正化する役割を担っている。
このため、PJMOは、PMOの定める予算管理の方針に従って、資料の提出を行うとともに、PMO等からの指摘、助言又は指導に対しては必要な対応策を講ずる。
- 2. 解説
「PMOの求めに応じて必要な資料を提出し」
「PMOの求めに応じて」とは、PMOが定める予算管理の方針及び手順に従い、予算要求に関する手続を進めることを指す。府省によりPMOのヒアリングの実施等の定めがあるときには、これに係る調整及び対応を手順に基づき実施する。
なお、新規に整備する情報システムの予算要求を行う場合は、PMOを通じて、情報システムIDの仮IDを取得するものとする。
「必要な資料」とは、「2.資料の準備」で示す提供を求める資料例を基本として、PMOがPJMOに対して個々に提出を求める資料をいう。
これらには、「2.資料の準備」で示された資料のほか、それらの根拠となる情報(経費の詳細な見積り、効果指標の根拠となる事実情報等)も想定されるため、「2.資料の準備」及び「3.経費の見積り」の事項に従い、予算要求の提出前に資料及び見積りを準備する。
デジタル庁による確認
デジタル庁は、提出された資料を確認の上、必要に応じて、PJMOに対し指摘、助言又は指導をし、その内容をPMOにも共有する。
PJMOは、指摘、助言または指導に適切に対応するとともに、デジタル庁から調整を求められた場合には、PMOに相談の上、適切に対応する。
- 1. 趣旨
デジタル庁は、政府全体のITガバナンスを機能させるための諸活動を行う観点から、予算の要求内容等の調査を行う。これに際し、要求内容等の詳細を把握するため、PJMOに対して資料の提出を求める場合がある。
このため、PJMOは、デジタル庁からの求めに従い、資料の提出を行うとともに、デジタル庁からの指摘、助言又は指導に対しては必要な対応策を講ずる。
概算要求作業
一括計上対象システムについては、PJMOは、デジタル庁と調整済の金額をもって、デジタル庁の指示・連絡に従い概算要求資料を作成し、PMOを通じて提出する。
1. 趣旨
2022年(令和4年)4月20日改定において、予算に関する手続き等を追記した。
プロジェクト計画書の段階的な改定
プロジェクト推進責任者は、**予算要求の内容について、プロジェクト計画書に反映し、当該計画書の内容を更新する(1)**ものとする。
- 1. 趣旨
プロジェクト計画書に記載されている予算に係る情報は、プロジェクト全体の予算執行管理や費用対効果の把握のために重要である。
予算要求時に新たに作成した資料についても、プロジェクト計画書の段階的詳細化の一環として、プロジェクト計画書に追加するとともに、調達フェーズにおけるインプット資料として活用するものとする。
予算要求額が確定した際は、速やかにプロジェクト計画書の内容を更新することが重要である。
- 2. 解説
「予算要求の内容について、プロジェクト計画書に反映し、当該計画書の内容を更新する」
「予算要求の内容」とは、主としてプロジェクト計画書の予算(「第2章2.1)キ 予算」参照)を指す。
確定した予算要求額をプロジェクト計画書に反映するとともに、予算査定過程でプロジェクトの実施範囲やスケジュール等に変更が発生した場合は、当該項目の内容も更新する。
一括計上対象システムに関する予算の配分
1) 執行計画案の作成
PJMOは、デジタル庁の指示・連絡に従い予算の調達スケジュールに支障を来すことの無いように注意しつつ執行計画案を作成し、PMOを通じてデジタル庁に提出する。
執行計画案の作成に当たっては、調達案件毎に金額と執行予定時期(調達予定時期)を整理して記載する。
執行計画案の策定時点で判明している契約金額は適切に反映させる。
2) 予算の配分
デジタル庁は、PMOを通じてPJMOから提出された執行計画案を基に、内容を調整し、執行計画を決定する。
また、配分する予算については、提出された執行計画案に記載されている執行予定時期を踏まえ、適切な時期に配分する。
3) 予算執行管理
PJMOは、調達案件毎に執行実績を記録し、デジタル庁の指示に基づきPMOを通じて定期的に報告すること。
入札差額等の執行残については、デジタル庁が決定した執行計画以外の案件にPJMOやPMOの判断だけで使用する事はできない。
執行計画に変更の必要が生じた場合には、PMOを通じて執行計画の変更についてデジタル庁へ協議を行う。
執行計画の変更に当たっては、執行計画の妥当性や、これまでの執行実績が適正なもので、真にやむを得ないものであるか、不足額が適正なものであるか問われることになるため、日頃から適切な予算執行・管理に努める必要がある。
- 1. 趣旨
2022年(令和4年)4月20日改定において、予算に関する手続き等を追記した。
デジタル社会推進実践ガイドブック DS-110
デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン 解説書
(第3編第4章 サービス・業務企画)
2025年(令和7年)5月27日
デジタル庁
改定履歴
[1) 課題整理 10](#課題整理)
[2) 企画案作成 11](#企画案作成)