第4-1 特定個人情報の利用制限
第4-1-⑴ 個人番号の利用制限
要点
○ 個人番号を利用できる事務については、番号法によって限定的に定められており、事業者が個人番号を利用するのは、主として、源泉徴収票及び社会保障の手続書類に従業員等の個人番号を記載して行政機関等及び健康保険組合等に提出する場合である。→1○ また、例外的な利用について、番号法は個人情報保護法に比べ、より限定的に定めている。事業者の場合、利用目的を超えて個人番号を利用することができるのは、①激甚災害が発生したとき等に金融機関が金銭の支払をするために個人番号を利用する場合及び②人の生命、身体又は財産の保護のために個人番号を利用する必要がある場合である。→2
(関係条文)
- 番号法 第9条、第30条第2項
- 個人情報保護法 第18条
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1 個人番号の原則的な取扱い
個人番号(注)は、番号法があらかじめ限定的に定めた事務の範囲の中から、具体的な利用目的を特定した上で、利用するのが原則である。
事業者が個人番号を利用するのは、個人番号利用事務及び個人番号関係事務の二つの事務である。このうち、健康保険組合等以外の事業者が個人番号を利用するのは、個人番号関係事務として個人番号を利用する場合である。なお、行政機関等又は健康保険組合等から個人番号利用事務の委託を受けた場合には、個人番号利用事務として個人番号を利用することとなる。
事業者は、個人情報保護法とは異なり、本人の同意があったとしても、例外として認められる場合を除き(2参照)、これらの事務以外で個人番号を利用してはならない。
* 事業者は、社員の管理のために、個人番号を社員番号として利用してはならない。
(注)「個人番号」には、個人番号に対応して、当該個人番号に代わって用いられる番号等も含まれる(番号法第2条第9項)。例えば、数字をアルファベットに読み替えるという法則に従って、個人番号をアルファベットに置き換えた場合であっても、当該アルファベットは「個人番号」に該当することとなる。また、個人番号の一部のみを用いたものや、不可逆に変換したものであっても、個人番号の唯一無二性や悉皆性等の特性を利用して個人の特定に用いている場合等は、個人番号に該当するものと判断されることがある。一方、事業者が、社員を管理するために付している社員番号等(当該社員の個人番号を一定の法則に従って変換したものではないもの)は、「個人番号」には該当しない。
A 個人番号を利用することができる事務
a 個人番号利用事務(番号法第9条第1項から第3項)個人番号利用事務とは、主として、行政機関等が、社会保障、税、災害対策その他の行政分野において、保有している個人情報の効率的な検索、管理のために必要な限度で個人番号を利用して処理する事務をいい、番号法別表に掲げる事務、同事務に準ずる事務として主務省令で定める事務(「準法定事務」)及び地方公共団体が個人番号を利用することを条例で定める事務がこれに該当する。
事業者においては、健康保険組合等の一部の事業者が法令に基づきこの事務を行う。
なお、個人番号利用事務の委託を受けた事業者は、個人番号利用事務を行うことができる。この場合において、行政機関等から委託を受けたときは、委託に関する契約の内容に応じて、「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン (行政機関等編)」が適用されることとなる。
b 個人番号関係事務(番号法第9条第4項)
個人番号関係事務とは、法令又は条例の規定により、個人番号利用事務の処理に関し必要な限度で他人の個人番号を利用して行う事務をいう。具体的には、事業者が、法令に基づき、従業員等の個人番号を給与所得の源泉徴収票、支払調書、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届等の書類に記載して、行政機関等及び健康保険組合等に提出する事務等がこれに該当し、およそ従業員等を有する全ての事業者が、個人番号関係事務実施者として、個人番号関係事務において個人番号を取り扱うこととなる。行政機関等及び健康保険組合等の個人番号利用事務実施者は、このようにして提出された書類等に記載されている特定個人情報を利用して、個人番号利用事務を行うこととなる。
なお、個人番号関係事務の委託を受けた事業者は、個人番号関係事務を行うことができる。
* 事業者が、講師に対して講演料を支払った場合において、所得税法(昭和40年法律第33号)第225条第1項の規定に従って、講師の個人番号を報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書に記載して、税務署長に提出することは個人番号関係事務に当たる。
* 従業員等が、所得税法第194条第1項の規定に従って、扶養親族の個人番号を扶養控除等申告書に記載して、勤務先である事業者に提出することも個人番号関係事務に当たる。
B 利用目的を超えた個人番号の利用禁止
a 利用目的を超えた個人番号の利用禁止(番号法第30条第2項により読み替えて適用される個人情報保護法第18条第1項)個人情報取扱事業者は、個人番号の利用目的をできる限り特定しなければならない(個人情報保護法第17条第1項)が、その特定の程度としては、利用目的を単に抽象的、一般的に特定するのではなく、個人情報と同様に、本人が、自らの個人番号がどのような目的で利用されるのかを一般的かつ合理的に予想できる程度に具体的に特定することが望ましい。
番号法は、個人情報保護法とは異なり、本人の同意があったとしても、利用目的を超えて特定個人情報を利用してはならないと定めている。
したがって、個人番号についても利用目的(個人番号を利用できる事務の範囲で特定した利用目的)の範囲内でのみ利用することができる。利用目的を超えて個人番号を利用する必要が生じた場合には、当初の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲内で利用目的を変更して、本人への通知等を行うことにより、変更後の利用目的の範囲内で個人番号を利用することができる(個人情報保護法第17条第2項、第21条第3項)。
(利用目的の範囲内として利用が認められる場合)
*〈当年以後の源泉徴収票作成事務に用いる場合〉前年の給与所得の源泉徴収票作成事務のために提供を受けた個人番号については、同一の雇用契約に基づいて発生する当年以後の源泉徴収票作成事務のために利用することができると解される。
*〈退職者について再雇用契約が締結された場合〉
前の雇用契約を締結した際に給与所得の源泉徴収票作成事務のために提供を受けた個人番号については、後の雇用契約に基づく給与所得の源泉徴収票作成事務のために利用することができると解される。
*〈講師との間で講演契約を再度締結した場合〉
前の講演契約を締結した際に講演料の支払に伴う報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書作成事務のために提供を受けた個人番号については、後の契約に基づく講演料の支払に伴う報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書作成事務のために利用することができると解される。
*〈不動産の賃貸借契約を追加して締結した場合〉
前の賃貸借契約を締結した際に支払調書作成事務のために提供を受けた個人番号については、後の賃貸借契約に基づく賃料に関する支払調書作成事務のために利用することができると解される。
(利用目的の変更が認められる場合)
* 雇用契約に基づく給与所得の源泉徴収票作成事務のために提供を受けた個人番号を、雇用契約に基づく健康保険・厚生年金保険届出事務等に利用しようとする場合は、利用目的を変更して、本人への通知等を行うことにより、健康保険・厚生年金保険届出事務等に個人番号を利用することができる。事業者は、給与所得の源泉徴収票作成事務のほか健康保険・厚生年金保険届出事務等を行う場合、従業員等から個人番号の提供を受けるに当たって、これらの事務の全てを利用目的として特定して、本人への通知等を行うことにより、利用目的の変更をすることなく個人番号を利用することができる。なお、通知等の方法としては、従来から行っている個人情報の取得の際と同様に、社内LANにおける通知、利用目的を記載した書類の提示、就業規則への明記、自社のホームページ等への掲載等の方法が考えられる。
b 合併等の場合(番号法第30条第2項により読み替えて適用される個人情報保護法第18条第2項)
個人情報取扱事業者は、合併等の理由で事業を承継することに伴って、他の個人情報取扱事業者から当該事業者の従業員等の特定個人情報を取得した場合には、承継前に特定されていた利用目的に従って特定個人情報を利用することができる。ただし、本人の同意があったとしても、承継前に特定されていた利用目的を超えて特定個人情報を利用してはならない。
* 事業者甲が、事業者乙の事業を承継し、源泉徴収票作成事務のために乙が保有していた乙の従業員等の個人番号を承継した場合、当該従業員等の個人番号を当該従業員等に関する源泉徴収票作成事務の範囲で利用することができる。
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2 例外的な取扱いができる場合
番号法では、次に掲げる場合に、例外的に利用目的を超えた個人番号の利用を認めている。
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a 金融機関が激甚災害時等に金銭の支払を行う場合(番号法第9条第5項、第30条第2項により読み替えて適用される個人情報保護法第18条第3項第1号、番号法施行令(注)第10条、激甚災害が発生したとき等においてあらかじめ締結した契約に基づく金銭の支払を行うために必要な限度で行う個人番号の利用に関するデジタル庁令(平成27年内閣府令第74号))
銀行等の預金取扱金融機関等が、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(昭和37年法律第150号)第2条第1項の激甚災害が発生したとき等に、支払調書の作成等の個人番号関係事務を処理する目的で保有している個人番号を顧客に対する金銭の支払を行うという目的のために、顧客の預金情報等の検索に利用することができる。
(注)番号法施行令とは、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行令」(平成26年政令第155号)をいう(以下同じ。)。
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b 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難である場合(番号法第30条第2項により読み替えて適用される個人情報保護法第18条第3項第2号)
人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるときは、支払調書の作成等の個人番号関係事務を処理する目的で保有している個人番号について、人の生命、身体又は財産を保護するために利用することができる。
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第4-1-⑵ 特定個人情報ファイルの作成の制限
要点
○ 個人番号関係事務又は個人番号利用事務を処理するために必要な範囲に限って、特定個人情報ファイルを作成することができる。(関係条文)
- 番号法 第29条
● 特定個人情報ファイルの作成の制限(番号法第29条)
事業者が、特定個人情報ファイルを作成することができるのは、個人番号関係事務又は個人番号利用事務を処理するために必要な範囲に限られている。法令に基づき行う従業員等の源泉徴収票作成事務、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届作成事務等に限って、特定個人情報ファイルを作成することができるものであり、これらの場合を除き特定個人情報ファイルを作成してはならない。
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* 事業者は、従業員等の個人番号を利用して営業成績等を管理する特定個人情報ファイルを作成してはならない。
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* 事業者から従業員等の源泉徴収票作成事務について委託を受けた税理士等の受託者についても、「個人番号関係事務実施者」に該当することから、個人番号関係事務を処理するために必要な範囲で特定個人情報ファイルを作成することができる。